第11章 闇 終
カカシは、
目の前にいるニコニコと笑うふたりの家族を見た。
家に帰れば、優しく笑うヤナギの母親を頭で浮かべた。
羨ましかった。
カカシは、父や母が健康的で、毎日楽しそうなヤナギが心底、羨ましく思った。
優しい家族がいて。家に帰れば、あったかいご飯。熱めのお風呂。ふっくらした お布団。
「おかえり」って言われる。
「ただいま」って言える。
ヤナギの家庭は、幸せを絵に描いたような家族だった。
この幸せは、だれを踏みつけて築いた。
ヤナギは知らない。
カカシは、サクモからすべて聞いていた。
死ぬ前日に。
それでもカカシは、次の日、何事もなかったかのように、ヤナギに接した。罪はない。ヤナギに、なんら罪はないからだ。普通にいつも通りに任務をともにした。
今はちがった。サクモがいない。
カカシを置いて、先に旅立ってしまった。
カカシは深い闇にのまれる。ドス黒く、深い深い恨みが、ふつふつと上がった。
ぶちまけたかった。何もかも、叫んで壊したくなった。嫌われても構わない。なんなら恨んでもらおうが、構わない。引きずり下ろしたくなった。
父さんが自決したのは、
目の前の男が原因だと、叫びたくなった。