第26章 帰還
病棟館内フロアを、スタッフの補助なしでグルグルと回った。
歩くリハビリ中で、けして遊んでるわけじゃない。技能訓練なのだ。
今日もなんだか、あたたかい。廊下の窓から光がよく照る。暖冬だからかな。気持ちよくて、つかの間の休息だ。
じぶんの部屋を通り過ぎて、さらに真っ直ぐ歩くと、真っ白で大きな壁にぶち当たる。そこで行き止まりだ。
くるりと反転すれば、
右側の角部屋はカカシの病室。
私は足をとめる。
眠る扉を見つめた。
カカシは
まだ体力やチャクラが完全に
戻ってない。
いま暗部のなかで
いちばん酷い状態だ。
……横になっているのかな。
もしくは寝てるのかな。
こっそり。気配を消してカカシの部屋を覗いてみた。起こしちゃ悪い。
扉の取手を掴んで
数センチの隙間を作った。
ベッドのほうを覗いた私は
ギョっとする。
え?
だれかいる。
後ろ姿が見える。
長髪の銀髪。
いつもの下駄履き。
さらにとなりに並ぶのは
白い正装着。
背中に掲げるのは
神々しい
3代目火影の文字。
ひぇ…。
猿飛ヒルゼン様と、
自来也様が
カカシの病室に丸椅子に
腰掛ける。
しまった。
気配なんて探ってなかった。
ふたりとも扉に背中を向けて
表情が把握できない。
ただ、手振りや仕草の雰囲気から
お話の最中だろうな。
ベッドで上体を起こすカカシも
なにやら真剣な顔つきで、
ふたりの相づちをうち
会話する。
なにやら真剣な顔で。
……イヤな予感がする。
私の予感は
だいたい当たるのだ。
頭の警鐘センサーが
たちまち鳴り響く。
逃げろ。これはヤバイやつだ。危険だ。厄介な事に巻き込まれるぞ。と。
……戻ろう。
ひとり
自己完結した私。
カカシに
いま
声をかけるのは
やめておこう。
そっとしておこう。
逃げよ……ではなく。
よくよく考えれば、大事な話し合いに
首を突っ込むのは野暮な話だ。
そうだ。よくない。
私はリハビリ中だ。
うんうん。
右手に持つ取手を動かした。ゆっくり。音が鳴らぬように。徐々に扉を閉めた。