第26章 帰還
「いただだだだだぁぁあ!」
いいい痛いーー!!
死んじゃうーー!!
マット上で
スタッフが私の背中を押す。
足を伸ばして前屈みの状態だけど、とにかく痛い。ふとももや股が痺れる。腹が痛いんじゃなくて、身体が硬くなってるのだ。
「おい!見苦しいぞ!花奏!」
遠くからガイの叱咤が飛ぶけど、痛いものは痛い。痛い。無理だし。硬いのは昔からなの!ガイをクソゥと睨みたいが、目端に涙が浮かんで、痛さに堪えていた。
「はい、ゆっくり息をはいてくださいねーー。ゆっくりーー」
深呼吸。そうだ。深呼吸だ。深呼吸…しんこきゅう。しんこ…し、ん…し、し…死んじゃう。い"い"だぁいー痛いーーー。
「じゃあ足開いてくださいねーー」
背中を押すスタッフさんが
涼しい顔で私のトドメをさす。
もうヤダ。やめたい。
「ギャァァア!ぁぁあ!痛い痛いーー!むりむりむりむりィィ!」
太ももが痛い。割れる!尻が割れる。ああ尻はもとから割れてる。ゔぅーーー!
「花奏、もうーーー、声がうるさいわよ?静かにしてよ」
紅がにっこりして、私が頑張って90度に開いた脚を、さらに広げた。
「ギャァァア!おおお鬼ぃぃーー!」
わめく私の過剰反応に、紅はゲラゲラして腹を抱えて笑う。く、悔しい。ひどい。友だちなのに。鬼だ。鬼。鬼ぃ。
「く、紅……、かならず…あああ、あとで仕返ししてやるぅぅ…いいいたたたたたただだだだだ……」
「じゃあ、もうちょっと開いて」
と紅がさらに脚を広げた。
「ッ!!ギャァァアァァア!」
私の泣き叫ぶ声が
リハビリ室に木霊した。