第26章 帰還
「ガイ、S級任務お疲れ様。大変だったらしいね。大丈夫だった??」
私が聞けば
ダンベル速度がさらに上がる。
ガイのサポートするスタッフが
たちまち顔を引きつらせた。
「ガイさん、あの……、ゆっくり、ゆっくり動かしてくださいね?」
スタッフが静止の声は
本人の耳には届かない。
「ハッハッハ!オレがカカシのような軟弱者に見えるか?余裕だ!まだまだ重量を増やせれるぞ!」
ガッチャンガッチャン
器具が鳴る。激しい。
さすがガイだ。
「う、うん。そうだね。頑張ってね」
「おう!花奏も頑張れよ」
「あはは。うん。ありがとう」
私は知ってるよ。ガイは努力家で真面目だ。いまだって、上半身ばかり鍛えるけれど、右脚は包帯で固定する。
やっぱり……任務で
無理をしたようだ。
ガイのとなりに並ぶのは
新人の男の子だった。
「おはようございます、花奏先輩!今日からですか!頑張りましょうね!」
「おはよう。うん、ありがとう」
みなぎる闘志を燃やす新人は
重量あるバーベルを、中腰のまま肩で支えた。
背後のスタッフのかけ声に合わせて、歯を食いしばり持ち上げる。うなり声を掲げて、上げ下げを繰り返した。ガチャガチャと器具が鳴る。
そっと近寄り、何キロあげてるのかな。ウェイトをこっそり覗いた。なんと80キロの文字。両方合わせれば160キロ。
びっくりだ。カカシが普段、準備運動だと言って、鍛える重しだ。
入ったばかりの新人が、同じようにガンガン持ち上げているのだ。
「す、…すごいね。やる気満々だね」
「はい!オレ将来、隊長を目指しますから!よろしくお願いします!」
ええ…!?
新人は重いバーベルを中腰でトレーニングを続ける。筋肉質の両腕が震える。汗がひたいから流れ落ちた。
歯肉を見せて
ひたすらリハビリを続ける新人。
帰還後の雰囲気やリハビリに対する姿勢が、ガラリと変わっていた。
「おい新人!では勝負だ!」
となりに並ぶ
ガイが目を光らす。
「いいですよ!ガイ先輩!」
ガチャンガチャン、ダンベルを上げ下げする音とバーベルの上下する音が激しく響く。
背後に待機するスタッフは困り顔だ。
でも。ガイに
良いライバルが出たようだ。