第26章 帰還
「帰宅後は普段通り、湯船に浸かっても大丈夫ですよ」
自室に戻った。いまは7時過ぎ。
回診の医師は、私の腹部の傷を診察して言った。
「忍の皆さんの回復は早いですね。一般の方とスピードが違いますね」
となりに並ぶ看護師から塗り薬やガーゼを受け取ると、患部処置を施した。
「腹の傷は……残るかもしれませんが、その他の傷は綺麗に治ると思いますよ」
医師は、処置を終えると、つらつらとカルテにペンを走らせた。
「来週中もう1度見せてください。明日は退院ですね。さっそくリハビリ開始しましょう。軽いモノから始めてください」
「わかりました。
先生、ありがとうございます」
私に安堵が広がる。念願のリハビリだ。やっと身体を動してよいのだ。
「花奏さん、お大事にしてくださいね。では失礼します」
医師はカルテを閉じると、パイプ椅子から立ち上がった。扉を開けてカカシの部屋へ足を運んだ。
「お花飾りますね」
看護師のお姉さんは、どこから運んできたのか、水の入った筒の花瓶に、手いっぱいの花をいれた。
そのまま南東向きの
大きな窓近くに飾った。
それは
季節を感じる冬の花束で。
オレンジや黄色。ピンク色や赤色。色とりどりのガーベラの花。真紅と緑が鮮やかなポセンチア。
「わぁ……綺麗なお花ですね。いったいどうしたのですか?」
すごく可愛い。
振り向いた看護師は
やけに苦笑いだった。
「すみません、うっかり口を滑らせてしまい。面会謝絶だと断ったのですが……。せめてコレを渡して欲しいと、サスケ君に頼まれまして」
「……サスケくんが?」
どこで買ったのかな。頭で考えたとき山中家のお花屋が浮かんだ。
「サスケくんが毎日夕方病院へ来て、あなたがいるのか。いたら体調はどうなのか。とにかく粘り強くて……。とうとう、わたしが根負けしました」
看護師は
引きつらせて笑う。
「花奏さんをずっと心配してましたよ。では、もうすぐ朝食が来ますので」とお姉さんは笑顔で病室を出て行った。
私は窓際を穏やかな顔で見つめた。
どんな思いで花を選んでくれたのかな。花を選ぶときサスケくんは悩んだのかな……。
太陽の光がさんさんと降りそそぐ。
鮮やかな花々が
生き生きと輝いていた。