第26章 帰還
「夢……か」
「え…?ゆめ?」
「ああ悪い。脅かしたな」
私を凝視する。長い嘆息を漏らすカカシは、自分の汗をぬぐう。そのまま私の後頭部と背中に、手を伸ばした。
「花奏……」
「カカシ…?」
私の身体を痛いほど抱く。カカシの心音が伝わるほど、隙間なく腕の中に入っている。胸板の中で聞いた。
「……カカシ……?…恐い夢でも見たの?だいじょうぶ?」
私を抱きしめる腕は小刻みに震える。カカシは怯えていた。
「花奏………生きてるよな……」
泣きそうな声が耳に届いた。鼻をすする音と息詰まる吐息。カカシの匂いと、あたたかい体温が私を包んだ。
「……生きてるな……大丈夫だな…」
身体がゆるまると、
カカシが、ほっと安心した顔で、
私の頬を両手で覆った。
「…うん。うん。ほら、生きてるよ。ちゃんと私喋ってるよ。ね、だから……カカシ……大丈夫だよ?」
ずっと私を見ている。
目をそらさずに。
泣きそうな顔で。
「花奏がいなくなる夢見たのよ。悪夢だよ。お前がいなきゃダメなんだよ。知ってるでしょ。オレがメンタル弱いの」
カカシはそのまま顔を傾けて唇を深く合わせた。最初から荒々しい口づけで。
「ん…カカシ…」
激しく舌が絡まる。キスをする間、カカシは目を閉じなかった。ずっと私を見つめながら、口づけをかわすのだ。
「……愛してる…愛してるよ…」
唇をゆっくりと離した。目は真剣で。
くちもとをほんのりと笑みを作った。
「……花奏、約束しよ」
カカシがもう一度、
きつく抱きしめた。
「ぜったい今後は無理しない。オレも、できるだけ心がけるから。お前がなによりも大事なんだ。な?頼むから、約束して」
「うん……、わかった、カカシ……うん……」
何度も何度もその日、
私とカカシは
抱き合い、誓いのキスをかわした。