第26章 帰還
「花奏先輩、医師なんですが…いま別の方の診察中でして。あとから行くと言っていました」
テンゾウは笑った。
それはもう引きつった苦笑いで。
「りりょうかい…。あ、ありがとう」
テンゾウ…ごめんよ。
穴に入りたいどころか
地球を突き抜けたい気分だよ。
「あ、カカシ先輩」
「……なに」
まあつっけんどんで。その言い方はマズイよ。カカシはテンゾウをジトーーッと恨めしそうに見てる。
「ハハハ……えーっとですね。先ほど3代目が他里に対して声明を発表しました。雪ノ里へ向かった遺体処理班も、1時間前に帰還したと報告も受けました」
テンゾウは数枚につづられた
書類をカカシに渡した。
「これが3代目の声明文と
遺体処理班の詳細です」
受け取るカカシは、暗部ろ班隊長の表情に変える。真剣な顔で資料を受け取った。
「ま、今回みんな頑張ったよ。死者がひとりも出なかったんだからな」
「そうですね。イタチのおかげで花奏さんも無事でしたしね。言い方は悪いですが、ラッキーでした」
「……ああ」
一瞬沈む顔を見せたカカシ。そのあと、すぐに報告書を1枚1枚めくった。カカシは厳しい目つきで熟読していく。テンゾウも姿勢を正した。
「瀕死だった暗部の仲間も早々と目を覚まして、現在リハビリ中です。結果的には今回の任務、御の字ですね」
「ま、そうなんだが……今回で人材不足が露呈したな。底上げが急務だ」
きっぱり言うカカシに
「……底上げ?」と私は顔を傾けた。
私の修行不足の話ではなく?
カカシは「ん?ああ。花奏はよく頑張ったよ」と目を優し気に細めた。