第26章 帰還
「花奏……」
私の肩に包帯で巻かれた手が触れる。その手が強まると、カカシの胸に優しく抱き寄せられた。
「はぁ……もう…怒るよ」
「え…?」
「あのね……そっくりそのまま、お前に返すからな。なんでオレを先に帰したんだよ。花奏が先決に決まってるでしょ」
カカシの声色は
怒りの色に変わった。
いや。ダメだよ。カカシの方が重傷だからカカシを優先しなきゃ。
でも死ぬ可能性があったのは
確かだ。
「うん……ごめんね…」
私の謝罪は
カカシの胸のなかに消えた。
ぎゅっと強まって
私の背中に
あたたかい手のひらが
置かれる。心が落ち着いた。
「心配するだろ……もうバカ……。無茶するなよ。……ごめんな花奏……ひとり残して…」
カカシの声は小さく震えていた。
「ううん……。でも、カカシ…良かった…生きてて…本当に心配したよ」
あたたかいカカシの体温を感じて
私は目を閉じた。安心する優しい気持ちが広がった。もっと触れたい。ずっとこのままでいたい。
「まあ……なんとかな…。花奏、ちょっとこのままでいさせて。お前に触れたくて仕方なかった…」
「うん…私も…」
カカシに抱きしめられて
私は緊張の糸が切れたのか
あたたかい涙が
頬をつたっていた。