第25章 戦闘の終焉
鬼鮫は笑みを堪えきれない。
「イタチさんから、そのような言葉が飛び出すとは……ミステリーですね」
頭の思考回路が
ショートしそうだ。
「…やはり……、私には理解できませんね。イタチさんの思考が」
鬼鮫は白布で巻いた愛刀を下ろした。雪が混じる地面に、重い音を立てて深く突き刺した。
するとギャギャッと愛刀が
小さく蠢く。
イタチが夢中になる女を
おがみたくなった。
いったい
どこに魅力があるのか。
知りたくなった。
イタチに担がれた花奏の顔を
もう一度よく覗いた。
花奏の瞳は今も閉じたまま。
長いまつ毛に小さな涙が残る。ミルクティー色の艶のある長い茶髪。雪のように白い肌と赤く膨らんだ唇。しなやかな女性らしい体型。
残念なことが2つあった。
女に意識がないこと。そして……血塗れなことだ。
この女が目を覚ませば、どのような瞳で微笑むのか。どのような明るい声で笑うのか。
それは少し……見てみたいですね……
鬼鮫は心中で呟く。
「まあ、私が夢中になるほど、この女に削りがいがあるかどうかは不明ですが………ッ!……イタチさん……」
鬼鮫は喋る途中で
斜め後方に意識を向けて
身体を回転させた。
「まったく…爪が甘いですね。木ノ葉という場所も忍も」
残党か。
雪ノ里の忍か。
どちらでも良かった。
木ノ葉がどうなろうが鬼鮫には
関係ない話だ。
ただ、行手を邪魔する奴は
どんな敵でも容赦しない。
「どうやら片付けが
まだ済んでいないようですね」
鬼鮫は忙しなく近づく足音の方角を見つめたまま、愛刀を抜き肩に担いだ
「鬼鮫…やれるか」
チャクラを半分以上消費したイタチが、となりに立つ相棒に問うた。肩には、ぐったりと意識のない女が背負われる。
「急いで帰還したい。鬼鮫、頼む」
鬼鮫はイタチの言葉を聞いて
鼻で嗤った。
「……いいでしょう。ここは貸しにしましょう」
まったく…。
私も甘いですね。
鬼鮫は尖る白い歯を見せ
今か今かと敵を待ちかまえた。
深海で漂う鮫のように
目を光らせて。