第24章 戦場
「あははははは…!!」
愚弄した笑いが大広場に響く。
カカシの背中に刺さる雪の剣は、結晶となり、スッと消えた。鮮血がほとばしる。
ーー馬鹿な男だ。
はっきりと女が言った。雪ノ里の真の継承者の女王が、声高々に紅い唇を広げてあざ笑った。煌びやかなドレスを揺らして。
「カカシという男は、よほど仲間を失うのが嫌いなようだな。役に立たない小娘ひとりに、身を投げ捨てたぞ。まったく……頭の悪い馬鹿な男だ」
あざける声を
私は背中ごしに聞いていた。
絨毯の上には割れた面。
もう。終わってもいい。
「……少し……待っててね」
地に伏せたカカシに伝えた。ごめんね。痛いよね…もう少しの辛抱だからね。
「花奏……」
薄く目が開き、口布で隠れた唇が微かに動いた。弱々しい手を握った。
ごめんね。私が悪いの。カカシは何にも悪くないよ。悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。本当に自分は何もできない愚か者だ。
静かに優しい手を離して、
「…大丈夫だよ」と
私は笑顔でこたえた。
カカシが身体を動かそうとした。たちまち苦悶の声をあげる。
涙目で首を振った。
もう。やめて。十分だよ。
私はカカシをおいて
立ち上がった。
声にならない
雄叫びを私は上げる。
「ぅあぁぁぁ!!」
男のように。力のままに。すごい顔で。鬼の形相で。なりふり構わず。
無我夢中で
敵陣に狂犬のように突っ込んだ。
「っ!」
斬った。叫びながら、
だれの血わからないほど
斬りまくった。
「っ…気でも狂ったか…!」
顔を歪めた女は
猛攻する私を見て、一歩後ずさる。
「殺してやる…!!」
凶暴に攻めた。氷の剣で斬られても、鋭い刃で刺されても、肩や腕から血が噴き出ても、体勢を崩しても、何度も何度も怯むことなく、立ち向かった。
ーーあの女を…!!
顔を切られても、背中を刺されても、やけるような激痛が身体中をかけめぐっても、止まらずに切り込んだ。苦悶の声が斬り裂いた敵陣から響く。
大量の血が空を飛び散る。
鬼のようだ。顔をあげて、髪が乱れても、歯を食いしばって、猛然と敵に喰らいかかった。
頭にこびりついて
焼き付いて離れない。
あの女の…!
女王の嘲笑う声と
見下した顔が……!!
あの女が……!
あの女を…。ーー必ず…!!