第24章 戦場
「じゃ、行くか」
パックンの後ろ姿を見届けると、
カカシが根城を見据えた。
「花奏、絶対に無茶すんなよ」
「うん、了解」
となりで手を出したカカシ。
私は口を横に伸ばして、
手のひらを軽く弾いた。
ーー大丈夫。いつも通りに。
背に装着するチャクラ刀を引き抜いた。サクモさんが愛用した刀を。
今やっと気づいた。
柄を持つ自分の手が汗ばむ。
鼓動もやけに早い。
肩につい、力が入る。
医療班の到着は遅れる。カカシのチャクラは少ない。仲間は下山した。失敗は許されない任務。
ーーどうか……守って。
一瞬閉じた瞳をゆっくりと開いた。刀身に、チャクラを静かに流し込んだ。
落ち着いて動けば大丈夫。
ーー私のベストを尽くそう。
真っ白な閃光が
鋭く光を放ち伸びる。
どんな硬いモノでも切り裂く
このチャクラ刀を信じよう。
サクモさんの実力は
伝説の3忍が霞むほど。
チャクラ刀を使う大きな背中は、
いつだって勇ましかった。
見張りが背を向けた瞬間。
それが飛び出す合図だ。
「カカシ…」
愛しい名前を呼んだ。
「あのね、私も書いたよ。帰ったらいっしょに出しに行こうね」
ーー婚姻届を。
「ありがとうね。大好きだよ」
カカシの顔を見れずに伝えた。顔を見てしまえば、きっと泣いてしまう。自分でわかっていた。
「ああ、……オレもだよ」
優しい声が、
となりで小さく響いた。
「花奏……愛してる。オレは心からお前を大事に想っているからな」
「うん。……ありがとう、私もだよ」
優しい気持ちが広がり、
目を細めた。
遠くで
見張りが歩く。
もうすぐ。もうすぐだ。
そのときがきてしまう。
息を殺した。
「…花奏、…死ぬなよ」
最後の言葉を交わした。
「……うん。カカシも」
私が発した瞬間だ。
視界に入る敵が背を向ける。
一気に森を駆け抜けた。