第24章 戦場
アジトの様子を伺う背中を見つけて、
私はすぐに駆け寄った。
「カカシ、遅れてごめんね」
やっとカカシに追いついた。半日以上の走り詰めはさすがに堪えた。喋る息が切れる。肩が大きく上下した。
となりに並ぶパックンも
息荒く舌を出す。
空気をめいいっぱい吸い込んで、
深く吐き、息を整えた。
もう月がはっきり見える。数えきれないほどの星が夜空に瞬く。
「カカシ……大丈夫?」
私は上体を起こし、
狐面を被る身体を見上げた。
カカシの左腕に、白い包帯が重ねて巻かれる。その傷痕は紅くにじむ。肩や脚にも、斬られた傷が目立つ。戦闘の凄まじさを物語った。
「ま、なんとか動けるよ。花奏、パックン、悪かったな。全速力で走って来たんだろ?」
私はカカシに問われて、
すぐに兎面越しで首を振った。
「ううん。大丈夫だよ」
私なんて気にしなくていい。カカシの方が、はるかに身体の負担は大きい。
「カカシこそ無理しないで。ね?」
「……ああ」
カカシの返事に明るさは一切ない。
ため息が響く。
「他のアジトはすべて壊滅させた。たぶん、アレが最後だ」
森林をかきわけた前方1キロ先に、白い根城がそびえ立つ。高い塔にはランプの明かりが灯る。多数の見張りが、塔を取り囲むように配備していた。
「カカシ」
パックンはキョロキョロとあたりを見渡した。しんと静かな森林の中にいる。
「他の忍はどうした」
いぶかしげなパックンは顔を傾けた。30人の暗部隊員が雪ノ里へ向かった。いま忽然と姿がないのだ。
漆黒の口布をして狐面のままのカカシは、岩石の上に飛び乗ったパックンの頭を撫でた。
「パックン。悪いが頼みがある。テンゾウが、断崖絶壁の洞穴へ向かった。外から敵が来るのを、見張ってやってくれないか?アイツの力になってやって欲しい」
「洞窟…?わかった、すぐに向かおう。だが、カカシ。おぬしなぜ、ワシの問いに答えん。仲間はどうした」
バグ犬のパックンは眉間をひそめた。先ほどから、カカシの狐面から垣間見る瞳が、あまりに悲痛に満ちるのだ。