第24章 戦場
最後にカカシは、重症の仲間を背負う巨体のブルのそばによった。慈悲に満ちた表情でブルの頭をなでた。
「ブル、これから下山するぞ。何時間も重いだろうが、頑張ってくれ。もうひと踏ん張りだ。オレの仲間を、みんなを頼んだぞ」
カカシはブルの前足を触った。斬られた傷が目立つ。みんなと同じ包帯が巻かれていた。
ブルは首を振り、カカシの方に頭をこすった。一声発して、ブルは大きな巨体を起こした。もう出発する気なのだろう。
曲げた足を伸ばし、背に布団のように身を任せた暗部の仲間を落とさぬよう、ブルは慎重に前足と後ろ足で立ち上がった。
「頼んだぞ、夕顔」
ブルのそばにいた夕顔に声をかけた。長い髪がゆらめく。下山する仲間の中でいちばん経験豊富だ。適切な判断が出来る。
「はい。カカシ先輩、無理をなさらないでください」
「ああ」
カカシは黒い口布をつけて
狐面を装着した。紅い瞳が灯る。
先頭は新人とハギ。真ん中はブルや負傷した仲間。後方はボタンが並んだ。テンゾウが声をかけると、明るく笑顔で応えた。
静かに仲間たちが下山する。カカシは眺めたまま。
気配を消しながら、どこまで敵に見つからずに帰還できるか。
どこかで敵に
遭遇するだろう。
そのとき
隊長のカカシはそばにいない。本来ならば、いっしょに下山して仲間を助けたいが、そう甘くない。見えなくなってもカカシは仲間を案じた。
「カカシ先輩、では、ボクは断崖絶壁の方のアジトを爆破して来ます」
テンゾウは猫面のまま頭を下げた。カカは頼りになる背中を見送った。
「ああ、頼んだぞ。行ってこい」
「……はい。御武運を…」
かすれた声がカカシの耳に届いた。
テンゾウは、すぐに西へ向かった。