第24章 戦場
「オレは、まだやれるじゃないですか!!見てくださいよ。かすり傷しかオレは負ってないんですよ??」
いちばんの軽症はハギとボタンと新人だった。重症患者のそばにいる夕顔すら、腕を負傷して満足に術は使えないし、足首は捻挫して片足を引きずって歩いた。
「ーーだからだよ」
カカシは新人の肩を掴んだまま
ぐっと強く力を込めた。
「お前が仲間を助けるんだ。場数は踏んでないが、いちばん身のこなしが長ける。ここからがお前の正念場なんだよ。出くわした敵に、決して背を向けるな。命をかけて負傷した仲間を助けろ。わかったな!」
カカシは厳しい言葉と真剣な眼差しで
見つめた。
「お前がいちばんの頼りだ。隊長はお前だ。いいな。オレはもうお前を助けれないからな。頑張れよ」
言葉をカカシはつけ足したあと、ハギに視線を送った。
「ハギ、帰路の道案内を、先頭に立ってやるんだ。雪ノ里の地形は頭に叩き込んでるな。全員必ず生還させろ。暗部の誇りをかけてな。わかったな」
「は、はい!」
カカシは「よし、頼んだぞ」とハギの頭をなでたあと、自分の忍犬のそばに寄った。
屈んだまま、
一頭ずつ毛並みを揃えるように
頭や背や胴体をなでた。
「ごめんな、しかし傷だらけだな」
痛痛しい姿に
カカシの顔は悲痛にゆがんだ。
7歳からカカシと共にいっしょに過ごした。任務で無理をさせたことはあっても、離れたことはなかった。
「ごめんな」
カカシはもう一度謝った。もう会えないかもしれない。哀愁に満ちた。
「気にするなカカシ」
「カカシの方がひどい怪我だワン」
額に忍の文字や額当てをつけた忍犬は
カカシの膝にポンと前足を乗せた。
「ケケケ、帰ったら極上のジャーキーだ!」
目がつり上がる忍犬は
頭に浮かんだ餌によだれを垂らした。
7頭は明るくカカシに吠えた。忍犬たちは、7歳のときにカカシと契約を交わした後、幾度も共に任務をこなしてきた。
辛苦を舐めた経験は
忍犬達も一度や二度ではない。
「気にするな、隊長だ。カカシは」
にっこり笑ったのは、ナルトみたいな頬のアザがある忍犬だった。太陽のように明るいナルトが重なって見えた。
「ああ。ありがとう」