第24章 戦場
「ここまで……よくみんな頑張ってくれたな。ほんとうにありがとうな」
カカシは頭を下げたまま、仲間をねぎらった。隊長の姿に騒然とする仲間は、互いに顔を見合わせる。
だれひとり理解できない。
ありがとう……??
「カカシ先輩…?なに言ってんすか?」
新人は銀髪の後頭部を
見つめて言った。
「これから、オレら全員で最後の襲撃に向かうんですよね?」
顔をゆっくり上げたカカシは、微笑みの影を作った。そして新人の肩を叩いたのだ。
「いや。今すぐ雪ノ里を下山しろ。オレの忍犬のパックン以外、全員を引き連れていくんだ。仲間の命を守るのが隊長として、オレの責任と役目だ。最後のアジト襲撃はオレとテンゾウと………」
カカシはそのまま言葉に詰まる。名前を出すことさえ躊躇した口が、微かに震えた。カカシの拳は小刻みに動き、目のふちは、たちまち赤く充血した。
「もうすぐ到着する花奏……この3人で任務遂行するつもりだ。だからお前らは即刻下山しろ。わかったな」
最後まで声を出したあと、再度地面に顔を落とした。小さな滴が雑草と雪の上ではじいた。仲間は唖然として言葉を失う。カカシは小さな滴を落涙させた。
「………くそっ…!」
小さく吐き捨てた。
オレは……花奏を守るどころか、
殺すつもりか……。こんな考えしか浮かばないのか。最悪だろ…!カカシは自責の念にかられた。
強敵はまだ残る。チャクラや体力を温存した花奏の力を借りなければ、任務完遂できない。苦渋の決断だった。
ヤナギやイタチの穴は
ここまでデカいのか……。
あらためて思い知らされたカカシは
肩を大きく下げて深い息を吐いた。
「傷を負った重症の仲間を木ノ葉へ帰還させる。それがこの場で可能な最善策だ。新人、頼んだぞ」
そこまでカカシが言って
新人は声を荒げた。
「カカシ先輩!!いくらなんでも無茶ですよ!」
森で待機するこの場は、敵に見つからない距離。周囲のチャクラや気配を常に確認している。敵はいないが、叫ぶ野郎は馬鹿で無能な人間だと分かる。
新人はそれでも声を荒げなければ、
気が済まなかった。