第24章 戦場
ハギは「はい」と数秒遅れてカカシの背中に伝えた。
振り返って
そのまま目で追いかけた。
隊長の身体は
自分の体よりもボロボロに見えた。
腕は切り傷だろうか。怪我が目立つ。
二の腕の暗部の象徴が血の紅色に染まっていた。隊長の歩く後ろを見れば、雑草に血痕が続いた。
カカシは痛みで顔がゆがんだ。動くたびに斬られた傷がズキズキと痛むのだ。
医療ポーチから包帯とガーゼを取り出し、慣れた手付きで、器用に患部の処置を施した。歯で包帯を噛み、白い包帯をぐるぐるに重ねた。
血が止まればいい。そんな巻き方だ。カカシが包帯をきつく縛っても、傷口は深いのか、血はじんわりと滲んだ。
「よし、最後の段取りを伝えるぞ」
カカシは処置を終えて、大きく円で集まる仲間達に視線を注いだ。10時間以上の死闘を戦い抜いた仲間を。
腰を下ろす仲間たちは、だれ1人無傷ではない。
後半の襲撃は激しさを増した。
脚や腕を、重度の打撲や骨折した者が続出した。骨が折れた箇所を木の枝で固定させたが、大きく赤々と腫れ上がる。
爆札や敵の自爆に巻き込まれた仲間も目立った。印を結べぬほどの火傷を負った者もいる。
はしで岩に持たれる仲間は
急所はかわしたようだ。
だが、背中の傷が深い。皮がめくれ血肉が露出する。となりにいる別の仲間が、大きなガーゼに薬を塗り、応急処置を施した。
いちばん重症な仲間は、忍犬のブルの背に身を任せる。
頭部を氷の剣で負傷した。チャクラが乱れ意識朦朧。その仲間は脈拍も体温も徐々に下がりつつある。
重症の仲間に必要なのは、一刻も早い治療だ。カカシの顔に苦渋の色が出ていた。
撤退の文字が戦闘中、幾度も頭によぎった。そのたびにカカシは心を鬼にした。
10時間以上の戦闘についた。すべては木ノ葉の治安や秩序を保つため。平和のため。火の国からの依頼のためだ。
「冷血のカカシ」と巷で囁かれ続けたカカシが、そっと狐面を上に外す。そのまま頭にのせた。
「ッ!?カカシ隊長?」
「なぜ面を外すのですか??」
騒めく仲間たちをよそに
黒い口布まで外した。
そしてカカシは深く
深く頭を下げたのだ。