第24章 戦場
花奏は、空高くそびえる高木の頂上にのぼり、目を薄く潜めた。
遠方の北西の方角から雷鳴がとどろく。
目のくらむ青い閃光が森奥でほとばしる。稲光と地面を揺らす地響きが鳴った。
カカシの千鳥……!
花奏のひたいに汗が光る。
焦っていた。
休憩もほとんど取らずに走った。今も肩が激しく上下する。あまりにも雪ノ里は遠くて、山々が険しい。
やっと雪ノ里の入り口だ。
遠く先々でキノコ雲のような黒煙や、赤い炎の燃える様子が見える。
青空の下。日は大きく西に傾く。冬の日照時間は短い。あと30分もたてば、空はオレンジに染まる。
兎面の下で唇を噛んだ。なんとしても夜の戦闘は避けたい。終わる気配どころか激化した状況だ。
暗くなる前に決着をつけたいと思うのは、花奏も同じだ。雪ノ里の忍には土地勘がある。圧倒的にあちらが有利なのだ。
「よし…」
花奏は深呼吸をすると、すぐに地に降り立ち駆け出した。緊張の色がしだいに大きくなり、心音も早くなった。
仲間が死傷していないか。どこまで任務は完了したのか。気がかりは多い。
「花奏!!」
突然左側から名を呼ばれた。すぐに左を見ると、小さなパグ犬が草木をわけて、こちらに走り近寄る。
木ノ葉のバンダナを頭に巻き、胴体には斬られたような鋭い傷があった。
「パックン!」
兎面下で目くらう。血のにじむ姿が痛痛しく、顔に心配の色が滲んだ。
だが、近くでみれば傷は浅い。
小さく胸を撫で下ろした。
「どうしたの??カカシは?」
雷鳴は5キロ以上先で響く。離れて行動しているのだろう。
パックンは、
ハッハッハと、舌を出した。
喉が渇いているのか言葉がすぐに出ない。全速力で走ってきたようだ。
花奏はポケットにしまった水筒の蓋を開けて水を飲ませた。ごくごくと勢いよく喉が鳴る。
「ふぅ……すまん」
パックンは
生き返ったような顔をして花奏を見上げた。
「カカシに花奏を迎えに行けと言われたのだ。こちらが近道だ。敵にも遭遇せん。ついて来い!」
パックンはすぐさま方向転換して同じ道を突き進む。
頷き
その後ろを花奏も続いた。