第24章 戦場
「っ!!?」
慌てるのは残党の群集だ。
「おい!本当に飛んだぞアイツ!」
「バカか!!」
騒がしい声が沸き起こる。すぐさま残党達は崖下を覗き込んだ。標高差300メートルはあるだろうか。谷底は暗く視界が悪い。薄い霧さえ立ち込めた。
「こえぇ………」
下を見るのさえ躊躇する壮絶な展望。高所恐怖症をわずらう数名の足がすくむほどだ。
「おい……いたか?」
「わからねーよ」
「なんつー深さだ…」
暗部の野郎はどこだ。
遺体が見つからない。くまなく上から探すが崖下は真っ暗な闇のみ。谷底が見えない。
躊躇なく猫面の男は飛んだ。頭がイカれてるとしか残党は思えなかった。多勢の真ん中に立つ男は鼻であしらう。
ーーー死んだか。
「……バカなヤツだ。大好きな女の子と心中しちゃったようだぜ」
ギャハハハハハハハ……!!
崖下に背を向けた。
つまらねー奴を相手しちまったぜ。野朗供がゲラゲラと笑い声をあげる。他の場所の応援に向かおうとしたときだ。
「……暗部を舐めちゃ困るね」
深い谷底から
震えた声がした。
「……あ?」
幻聴か…??……まさかな。
念のためだ。ひとりの男が崖を覗いた瞬間だ。強烈な枝が襲う。
ーーなんだ!?木!?
「ぐっ…!!」
助け声を上げる前に、強靭な枝が喉に絡みつく。必死に自分の首を巻く枝をはがそうと試みるが、すぐに力は尽きた。
男は静かに
谷底へ引きずり込まれた。
「あれ、アイツは?」
さっきまで
後ろにいた男がいないのだ。
どこへ行ったんだ?
もうひとりの残党の男が振り返った瞬間だ。断崖絶壁の岩壁から巨大な大木が、地面を突き破り生えてゆく。
「…ッ!?なんだ?」
ぐねぐね生物のように動く大樹。幻術か?いや、そうでもない。水遁でも火遁でもない。
騒めく残党は目をむいた。初めて目にする技だったのだ。テンゾウは容赦しなかった。
木遁・大樹林の術‼︎
うねりを上げる巨大な大樹林が残党を襲う。強靭な枝で敵を四方八方から囲みあげる。強靭な枝で包み込むが正しい。悲鳴ごとテンゾウは躊躇なく潰した。
「ボクは優しくないからね」
文字通り容赦なく
敵を一網打尽に殱滅させた。