第23章 戦闘と平和の狭間
「笑った、え、ねーねーサスケ君、もう1回笑って?」
と言うと、サスケ君は途端に冷めた表情に変わった。
「は?なに言ってんだ。…花奏」
そう。目を細めてアホか。みたいな顔を綺麗な顔をでするのだ。串カツは熱いのに、相変わらずサスケ君はクールだ。
「なにかあったのかよ、花奏。おかしいぜ、急にテンション高いし、昼はテンション低いし……言えよ」
頬を膨らませたサスケ君が、氷が入ったコーラを口にした。しゅわしゅわ気泡が動いた。
「最後は美味しいものを食べたいからね。明日任務なんだ。早朝出るから、サスケ君、明日はイルカ先生が対応してくれるから頑張ってね。また帰ったらよろしくね」
出来るだけ明るく言ったのにな。サスケ君の目が大きく見開いた。
「最後はってなんだよ。帰ってくんだろ??まだたった一日しか護衛してねーじゃねーか、帰るって約束しろよ」
突然声が大きく変わる。私は急いで人差し指を口もとに置いた。
「しーー。そんな大きな声出したら追い出されちゃうよ」
大丈夫だよ。
ちゃんと帰ってくるよ。
そう言いたい。
けれども私は約束できない。
医療忍者の応援が遅れる。
霧隠れの里の残党が雪ノ里側についた。
広大な山々と崖が多い里での戦闘。
圧倒的不利な人数差。
勝ち目は何%なんだろうか。
だれ1人犠牲者が出ないことなど
あり得るのだろうか。
「帰れるよう努力するよ。頑張って行ってくるから、サスケ君、応援してね」
精一杯の笑顔を作った。小さな子を不安にさせてはいけない。サスケ君は両親や親族を失ったばかり。これ以上、辛い想いをさせてはいけない。
「おんなじ顔するなよ、無理して笑って欲しかったんじゃねーよ、オレは…」
サスケ君?下を向いてしまった。
しまった。食べてる最中にする話ではなかった。
「わかった!絶対帰ってくる!任せといて、大丈夫だよ。ね?さー食べよ?冷えちゃうよ」
今度はポン酢を付けて、ぱくりと揚がった蓮根を口にした。少し置いたから、ちょうど良い温度になった。甘酸っぱくて、美味しい。
「ほんとうだろうな。本当に帰ってくるんだな?」
黒髪をあげて、サスケ君が私を見上げる。泣きそうな顔をしていた。悲しい顔をさせてしまったことを後悔した。