第23章 戦闘と平和の狭間
ノックをする前から
空気はひんやりとしていた。
「3代目、失礼します‼︎」
三度叩き勢いよく扉を開けると、ちょうど医療忍者が、3代目火影さまに報告している最中だった。
「……っ」
全身を白く固めた医療班は、私を一瞥するや、表情を硬くした。
「っ!……あ、大変失礼致しました。医療班が目に入り…つい」
即座に頭を下げた。緊急事態であろとも、火影様の入室許可が必要だ。これは大変無礼な振舞いだ。
「……よい、花奏よ頭を上げよ。ワシの呼ぶ手間が省けた」
薄い白煙の混じる吐音が火影座席から響く。苦味を含む匂いが、静まり返る火影室を満たした。
「は。」
許可を得て視線を戻した。いつもの正面座席につく猿飛さまは、木目調の机上に目線を落とした。
長机一面に長く伸びた巻物を熟読される。パイプを口端に咥えたまま、地響きのように口もとが唸った。
「形勢が悪いのぉ…」
「報告書ですか」
私は、たまらずに一歩前に出た。
「うむ…アスマ班のな」
巻物にびっしりと文字が並ぶ。アスマの書いた文字が揺れる。だれかの血痕が端々に飛び散る。S級任務の過酷さを物語った。
猿飛さまは、神妙な表情で目を上下に動かす。ちりちりと細かな白煙が、戦への警告灯のように、天井へと登り続けた。
「花奏、今から悪い知らせを話す。覚悟して聞け。アスマとガイ、紅が命がけで得た情報じゃ。すぐにカカシにも伝書鳩で知らせる」
「はい」息を止めた。私に真剣な目が射抜く。猿飛さまは渋面を作り、言葉を述べた。