第23章 戦闘と平和の狭間
「あ、あ、あぶないよ、もう!」
頭に当たったら死んじゃうんだよ?
怒っても、サスケくんは
明後日の方向に顔をそむける。
「花奏が、いきなり変なこと言うからだろ。自分の家があるだろ」
びっくりするほど冷たい。まさに雪山で遭難してるみたいだ。ひどすぎる。
「…だって、……寂しい」
サスケくんは半眼で、腰を起こして身体の砂を払った。
「なん歳だよ。ひとりで寝れるだろ。ウスラトンカチ」
「う…、二十歳なんだけどさ。だって…帰ったら、ひとりじゃん」
「当たり前だろ」とサスケくん。頭大丈夫か。みたいな目で見てくる。
「そう…なんだけど」
私は往生際が悪かった。ダメだと言われたのに、すがった。
カカシの家に帰ったら、たぶん泣く気がする。だれかといたい。気を紛らわせたい。ぜったい考え込んで、寝れなくて、夜、ずっと起きてそう。
父親が亡くなったときと同じだ。身体が落ち着かない。だれかといたい。そばにいたい気持ちが溢れた。
「サスケくん……お願い。ぜったい邪魔しないよ。イヤだろうし、下で寝るし、……ダメ?」
返事は返らなかった。
「………ごめん。やっぱイヤだよね。気にしないで」
私も腰をあげて、膝や身体についた砂を払った。……仕方ない。息を吐いた。私は帰ろうと思ったときだ。サスケくんが小さく声を出したのは。
「……べつにイヤじゃねーよ。ほら帰るぞ」
「え」
サスケくんがアカデミーの門へ歩く。私を置いて、ひとりで行っちゃう。背中には大きなうちはマーク。少しお兄ちゃんにみえた。
急いで走って追いかけた。
「ごめんいいの?」
「ああ」
「サスケくん、無理しないで。ごめんね?でも…嬉しい。ありがとう」
「イヤだから黙ってたわけじゃねーからな。…花奏、勘違いすんな」
ぶっきらぼうな言い方だった。
私の方を見ない。
でも言葉は優しい。
「うん…ありがとう」
サスケくんって、
仕草とか表情が、なんか可愛い。
いまだって、覗く私を見ない。
「見んじゃねーよ」
不器用な王子様らしい。
私は小さな優しい男の子に
ふわりと微笑んだ。
いっしょに並んで帰ろうとすれば、医療忍者が火影室に向かう姿を、私は目撃する。
「ごめん、すぐ戻るから!」
慌てて瞬身の術を使い、
火影室に向かった。