第23章 戦闘と平和の狭間
「サスケくん、シカマルに対して恐かったよ?ダメだよ、お友だちは大切にしなきゃ」
放課後、サスケくんが1人で岩壁登りを始めた。「命綱はいらねー」って言うから下で見守っている。
私は一日中の変化の術で疲れた。岩壁にもたれて休憩中だ。
「どうでもいい。
友だちなんかいらねーよ」
なんとまあ、ひどいことを言うのだろうか。岩壁によじ登るサスケくん。かれこれ100回ぐらい登っただろうか。凄いぞ。
「またそんなこと言っちゃう。ダメだよ。友だちは大事だよ」
岩壁に登り切ったサスケくんはまた、軽快に降りる。まだやるのか。
「…うるせぇ」
うるせぇって、ひどい。泣くぞコノヤロウ。また岩壁に登った。次は片手で挑戦するようだ。左手を背中に回した。
「…っ」
結構きつそう。端正な顔がゆがんだ。
サスケくんと私以外、
もう運動場にだれも残っていない。
先生だって、15分前に帰った。
日は暮れてもう真っ暗だ。電灯が優しく灯る。日照時間は短い。時計の針は6時を指した。
「まだやるのー?」
「あと1回はやる」
すでに2時間は
修行を続ける。
サスケ君は相当な努力家だ。
頂点に立つ人間は
常に努力を積み重ねる。
小さな彼が、
それを証明している。
「サスケくん」
「なんだよ」
私が下から話しかけても、
構わずに腕を伸ばして上を目指した。
「今日ね、いっしょに寝ていい?」
私が言った瞬間だった。
サスケくんが足を踏み外して、
すべり落ちる。
「ちょっ…!!」
真っ暗だから、とにかく慌てた。両手を伸ばして、そのままスライディングキャッチ。ずりずり胸から地面を滑った。
「……ぐ…ぇ」
また背中に
サスケくんが馬乗りになった。
マジでいたい。
ポンと、思わず
変化が解けてしまった。