第23章 戦闘と平和の狭間
荷物室でボールを片付けた。
すると、隣に立つシカマルが、
私の右ポケットに指をさす。
「花奏、それ、なに入ってんだ?」
「え?…ああ!チョコレートのこと?ダメだよ。絶対あげないからね、あとで食べるの」
サクラちゃんからもらった大事なチョコだ。サッと右手でポケットを隠した。
「は、はぁー?ち、ちげーよ!なに言ってんだ。紙のことだっつーの。授業中書いてたろ」
「えっ」ちがうの?私は仰天する。
なぜヤツは知ってる。まさか見えていたとは。
「花奏、おまえ現役の忍だろ。最後の一撃は格別だ。あのサスケすら手も足も出ねーんだからな」
シカマルの目は確信に満ちる。ああ…だからサスケくんと対戦時に、シカマルが突然引いたのか。私を検証する為に。末恐ろしい秀才だ。ぜひ…略。
「あははは。シカマルの勘違いでしょう?チョコだけだよ」と横を通り過ぎた。
「いや待てよ」いきなり私のポケットに手が突っ込む。私は観念した。されるがままだった。
「これ、なんの紙だよ。なに書いてたんだ?」
シカマルの瞳が尋問する目に変わった。
私の眼前でノートの切紙を開く。一面に広がる雪ノ里の詳細を記した地形図。
「………えっと…」
調査で私も数回行った。記憶をたどり書き殴った。あとで見返すためじゃない。頭の中を整理するつもりで。
広大な山々と急な崖斜面に囲まれた雪ノ里。流れが急な川沿い。平坦で自然豊かな木ノ葉隠れ里とは、まるで違う。雲泥の差だ。自然の猛威溢れる。それが雪ノ里。
「シカマル。とにかく返して?それは、あなたに無関係な話だよ」
私は瞬時に紙を奪った。ポケットに戻した。あとで捨てよう。アカデミーで学ぶ子どもたちに、他里への殲滅話など無縁だ。
「忍だって認めんのか?」
シカマルの目が薄くなって、一気に顔が近づく。「う」と私はたじろぐ。オールバックで、小さなかおが可愛い。ああ、ちがうか。
「えっと……」
うーん。言っちゃダメだ。認めちゃダメだ。3代目に叱られる。