第23章 戦闘と平和の狭間
「花奏、真剣にやるって言ったはずだろ」
サスケ君が私をまっすぐ殴る。縛った茶髪が拳をかすめた。危ないってば。早いし。
「真剣にやってるよ」サスケ君の攻撃をかわす。よける。逃げる。
「じゃー、どうして右手を使わないんだ。本気出せ、花奏!」
鋭い足蹴りを、身体をひいてよけた。サスケ君の目が厳しい。バレた。
「わかったよ。じゃあ、次は私からやるね」と手を前に出して構えた。
よく私を見ている。右手はナルト君の1回だけしか使ってない。しかも反撃してない。自分にルールを課した。
利き手は使わない。
反撃はほぼしない。
この2点。
「いくよ」
瞬時にサスケ君の方に間合いに入る。左手で、脇腹かレバーに添えようとしたが、サスケ君の反応が素早い。拳が右腕に当たる。そのまま足蹴りまで入った。
「くっ…!」
私は我を忘れて本気になる。二手、三手蹴りや拳を交えた。とっさに両手でガードしたサスケ君の腕を、宙に投げ飛ばした。そのまま刀で。
あ、ちがう!!
「っー!」
しまった。慣例化した攻撃。
やり過ぎ!!
天を見上げて急いで走った。まずいまずい!落ちてきたサスケ君の身体を、両手で伸ばして、私が下敷きになった。
「ぐ……ぇ。…いたい」
変な声が出た。私の身体に乗ったサスケ君。気を抜いたら変化が解けそう。はぁ…危なかった。安心して息が漏れた。
「大丈夫?本当にごめんね?本気出しちゃった。サスケ君強いから」
私は下敷きのまま見上げた。だははは。だめな大人だ。サスケ君と目が合った。私が笑うと、すこし顔が緩んだ気がした。
「は、そうかよ。でも花奏の負けだからな」
そっとうなじに小さな優しい手が触れる。くそぅー…。負けん気は強いほうがいい。強くなる秘訣だ。
「ほんとうだ。あーあ、負けだね」
やはりサスケ君だ。
簡単にことは運ばないようだ。