第23章 戦闘と平和の狭間
「食べた?」
ガッと両サイドから私の肩と手は掴まる。廊下の端に追いやると、美少女2人がニンマリと口を歪ませた。
「あ、食べたわね。じゃあ、わたしたちの、おねがい、聞いてくれる?」
先ほどのサクラの可愛らしい笑みではない。肉食獣が牙で獲物を捕らえた顔で笑うのだ。
「ねーねー、花奏さーー、サスケくんと仲良いの?朝話してたし。わたしたち、サスケくんと遊びたいの。花奏から誘ってくれない?」
金髪美少女は
毒を盛った小悪魔の微笑だ。
「わたしが?ええ!?」
狼狽した私は、
目を右左に動かす。
しまった、コレは罠か!
チョコレートトラップか。
「「花奏、おねがい!」」
ハモった撫で声。手を合わせて潤んだ瞳。上目づかい。
断ったら怒りそう。
チョコ返せって言われそう。
完全にチョコは買収だ。賄賂だ。
なんて、したたかなんだ。
残り半分のチョコを口に入れた。
もぐもぐ。あーなんて美味なのか。返すつもりはない。顔がトロけた。
久しぶりに食べて、幸せだ。
やっぱり甘くて超美味しい。
完全に買収成功である。
なんて巧みな技を使うのだろうか。
ある意味天才だ。
「わかったよ。サスケくん誘えばいいんだね?」
チョコで私が買収されるとは。素晴らしいチームワークだ。
「うん♡わたし達、サスケくんと忍者ごっこしたいの」
サクラの目が♡マークでキラキラ輝く。サスケくんが好きらしい。熱弁はまだ続く。
「サスケくんはね」
「サスケくんってね」
演説は両脇から
エンドレスに続く。
なんてモテモテだろうか。
サスケくんは
将来選びたい放題らしい。
いや待て。
「忍者ごっこ?」
私は半眼な目に変わる。
なんで忍なのに、
忍者ごっこを
しなきゃならんのだ。
お母さんなのに
お母さん役するみたいな邪道だ。
「「ぜったい忍者ごっこがいい!」」
自己主張が大変素晴らしい。
将来肝っ玉のお母さんになるだろうな。
「んーじゃあ、どんな役がいいの?」
そういや昔、リンやオビト、カカシやヤナギと忍者ごっこした。
二手に分かれて長い木の棒を振り回す。俗に言うチャンバラごっこだ。
容赦ないリンとわたし。本気だ。
可哀想な目に遭ったのは、今振り返れば、男性陣だった。女の子は強いのだ。口喧嘩だって紅が圧勝だった。