第23章 戦闘と平和の狭間
「あ、花奏」
さっそく呼び捨てだ。
右側に立つサクラが、桃色の菓子の袋を前に出すと、手を突っ込んだ。
「はい!コレあげる!」
小さな握る手を
私の前にさし出して笑うのだ。
なんて…優しいんだろう。
天使だ。天使がいる。
「いいの?くれるの?」
甘いお菓子大好きな私は、
顔を期待させて両手を前に出した。
指の隙間から
赤いパッケージが覗いた。
「うん。お友だちのしるし」
サクラちゃんは手をパーにした。すると、ひんやりした固い感触が数個、手のひらに落ちてきた。
「わーー、ありがとう!!」
なんと赤いパッケージの包み袋に
入ったチョコのお菓子だ。
めっちゃ好きなヤツ!
長方形のチョコレートの中にビスケットが練り込まれる。半分にパキっと割れる。大好きなお菓子だ。私は甘いチョコに目がない。特にこのメーカーは格別だ。
なんと、なんと、3個もくれた。
「いいのーー?ありがとう!」
嬉しくて、まじまじと
表面のパッケージを見た。
桜のイラストと御守りのイラスト。
そして「必勝祈願」の文字。
ああ、そうだ。
冬は受験シーズンだ。
サクラが持つお菓子の袋にも、
御守りマークが描かれる。
年が明けると、
木ノ葉も受験一色に変わる。
上忍試験や医療忍者、さまざまな種類の筆記試験や実技試験が、いっせいに始まる。私も受けたが、まあ大変で。年々試験難易度は厳しく上がってる。
裏にも受験生に対して
応援メッセージが印字されていた。
【最後まで、あきらめないで】
【do your best】
【大丈夫。心配ないよ!】
それは、不特定多数に送る
応援のメッセージ。
決して、
私への言葉じゃない。
わかってる。
「ありがとうね。サクラちゃん」
一個、パッケージの端ギザギザ部分から、縦に破って半分に割って、そのまま口に入れた。
パキンと音が鳴る。サクサクのビスケットと甘いチョコが口の中で交わる。
甘くて美味しい…!
残り2つはポケットにしまった。
do your best
"あなたのベストをつくそう"
甘いチョコの香りを
噛み締めて小さく頷く。
私のできることを
頑張ろう。
そう思った。
甘いチョコレートのおかげで、
気持ちがほんの少し軽くなった。