第23章 戦闘と平和の狭間
廊下に出た。
右手を素早く動かし、
私は印を結んだ。
変化。
小さく弾ける音と共に、
7歳の頃の目線に縮んだ。
はぁ……。自然とため息が出た。
ひんやり長い廊下を1人で歩くと、柔らかで明るい日差しが、私を注いだ。窓から、木ノ葉隠れ里が一望出来た。
今日は天青が広がる。
ちぎれ雲といっしょに
白い月が浮かんだ。
風がそよぎ、葉が揺れる。
のどかな風景。いつもの平和な木ノ葉。
この平和は、
イタチの犠牲の上に成り立つ。
だれも知らぬ事実。
どれほど葛藤しただろうか。
どれほど苦痛や無念を
イタチは味わったのだろうか。
自分の両親を殺すような苦痛が
この世にあるだろうか。
辛かっただろうな……。
悲しかっただろうな……。
最後に見た、イタチの
血走る瞳を思い出していた。
当たり前の平和など、ない。
私の父親も大戦で木ノ葉の忍として、
死んだのだ。
甘ったるい考えでは成り立たない。
雪ノ里へカカシは向かっている。
殲滅させるために。
"カカシは…死ぬぞ"
自来也さまの言葉が
何度も、私の心を抉る。
カカシや暗部の仲間を
いくら心配しても、意味ない。
わかってる。
それでも
心は騒めいた。
本当は、
すぐにでも、駆けつけたい。
身をていしてでも、
ほんの少しでも良い。
役に立ちたい。
でも。すぐに出れない。
なぜなら、いま上忍は任務で、
ほぼ出払っているのだ。
せめて、
アスマや紅やガイが戻ってからだ。
万が一、いま敵の襲来されたら、いちばんに狙われるのは、紛れもなくアカデミーなのだ。