第23章 戦闘と平和の狭間
私は猿飛さまに許可をもらい、ソファに座った。焦げ茶の机上で巻物を開いた。
綺麗な文字が規律よく長々と並ぶ。それは、恐いほどに美しい字体だ。
イタチ……。
苦悶したであろう中身が
あらわになった。
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うちは一族、うちはフガクを筆頭に警務部隊によるクーデターを決起。
3代目猿飛ヒルゼン、及び
上層部の拘束を目的とする。
宣戦布告せずアカデミーを襲来し、無血開城を目標とする。暗部や忍との衝突は完全不可避。
最悪事態の想定。
木ノ葉隠れ里の滅亡。
他国の忍が攻め込む。
弱者の死傷者が多数発生する。
3代目による
たび重なる説得は、失敗に終わる。
結論。
第4次忍界大戦を回避する為
うちは一族殲滅と、最終結論に至る。
火の国民間人や木ノ葉隠れ里の住民への無差別テロを回避する為、無抵抗な子供も含め、うちは一族すべて撃破抹殺する。
ただし、サスケのみ残す。
実行者たっての希望。
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最期の震えた文字に
イタチの苦悩が滲んだ。
「猿飛さま、…ありがとうございます。決して口外しません。誓います。特にサスケ君には、ぜったいに」
巻物を丸めて紐で縛った。巻物の端には、うちはマークの烙印はない。
木ノ葉隠れ里の
シンボルマークの印が押される。
イタチは裏切ったのではない。木ノ葉を守ったのだ。子ども達の平和のために。サスケ君の為に、自分を犠牲にした。
そして、里の仲間を「愛する宝だ」と常々公言していた猿飛さまを見つめた。
「……猿飛さま、御決断ありがとうございました。戦時になれば混乱状態に陥っていると思います」
どれほど…
重い決断をされたのだろうか。
そして今回も。敵といえども、里を殲滅するのだ。苦渋の結論を出された猿飛さまに、頭を下げて礼を伝えた。
「花奏よ、カカシや仲間を信じろ。ワシの直属の忍じゃぞ。木ノ葉隠れ里の最高峰スペシャリストが揃うのじゃ。そう易々とやられぬ」
頭をあげると、猿飛さまは
自然な笑みを私に向けた。
「アスマや紅が戻り次第、すぐに向かえ。早まればそのまま行って良い。カカシの助けになってやれ。良いな」
「はっ」
一礼して、私は火影室を出た。