第23章 戦闘と平和の狭間
「ほら席つけーー、授業するぞー」
イルカ先生が
数分遅れてガラリと
ドアを開けて教室に入る。
花奏は黒板の方に体を向けたが、こうべは垂れた。表情は背中で見えないが、哀愁は漂う。
なんで、コイツ……
落ち込んでんだ?
「あ、ナルトくん」
花奏は、ナルトの耳に手を添えて
ボソボソと小さく喋った。
「おう、良いってばよ!」
ナルトは白いノートを何枚も破って花奏に満面の笑顔で渡した。
「ナルト君、ありがとう」
小声で目尻を下げて
優しく笑った。
今の花奏の顔は
本当に笑った顔だ。
…ちょっと…
かわいいじゃねーか…
シカマルは花奏の仕草に、
つい目を奪われた。
「じゃー、みんな35ページ開けてくれ」
授業が始まった。3限は国語。教科書を指でめくり、イルカ先生は、今日日直のキバを指名した。
読み始めるや否や、花奏は白い紙に夢中で描き始めた。なんだ。なに書いてんだ?
ガリガリ筆圧が強ェ。鉛筆を必死に走らす。ナルトも同じように描く。シカマルからナルトの描く絵は丸見え。イルカ先生の顔を落書きして、遊んでるだけ。
花奏はちがう。ガリガリ鳴る音がまだ続く。なに一生懸命に書いてんだ?
シカマルは疑問に持つ。
めんどくさいが、どうも気になった。
筆圧から考えれば…文字か?
いや、絵?
花奏は交換留学生じゃねーのかよ。なんで授業なんも聞いてねーんだ。
当のイルカ先生は
なにも言わねーし。
シカマルは、そっと
椅子から尻を浮かせて、
半分立ち上がる。
横からじゃ見えねー。
二つ括りの髪が邪魔で見えねーし。
ゆっくり首を伸ばした。脳天から少しだけ見える。
絵…?木?森?
花奏、授業中に
絵なんか描いてんのかよ。
ナルトと
同レベルじゃねーか。