第23章 戦闘と平和の狭間
カカシは仲間の姿を見て、
深く、息を吐いた。
自分の手に汗が滲む。身体が落ち着かない。心肺もやけに早い。
発破をかけたカカシが、いちばん神経を尖らせていた。ガチガチな拳を強く握った。
情けないね…まったく
「お前ら。気合入れていけよ!!」
「「ハイ!」」
カカシは最後の言葉を伝えたあと、ほんの数秒、まぶたを閉じる。
ーー無事に全員の生還を。
ゆっくり開けた瞳は
鋭くて冷たい。
情を捨てろ。
非情に。
「行くぞ」
「「はっ」」
号令を送り、
すぐさま雪ノ里へ向かった。
森を駆け抜ける途中、花奏のことを考えた。
行く直前、彼女に愛を捧いだ。しかもアカデミーで。多分、オレはバカなのだろう。これから熾烈な任務に向かうというのに、大事な体力を使い、なにをやってんだと、カカシは自重した。
それでも。
会いたかった。
花奏に
任務前に触れたかった。
最後かもしれない。
そう思うと自分を抑えきれなかった。
愛してると、
最後に花奏に伝えたかった。
愛していると。
心から。
花奏に子どもが出来れば良い。
カカシは純粋に子を望んだ。
赤子が宿れば、万が一、命を落としても、花奏の悲しみが多少軽減されるのではないか。そんなことを思った。泣いて悲しむ姿よりも、笑って困って照れた顔をして欲しい。
来るな……ぜったいに、
花奏は、来るな……。
この戦場に
お前は、参加するな……。
私情の悲痛な願いが、何度も、何度も、
カカシの脳裏によぎった。