第22章 葬儀と日常生活へ
喪服や黒のコートを置くために、ヤナギの実家に行った。清め塩を身体に撒いて鍵を開ける前に気づく。扉を開けた。銀色の髪が忙しなく動いていた。
「カカシ…?」
覗くと、カカシがこちらを見た。奥で掃除している。
「ああ、お帰り」
パタパタと部屋の埃を落とす。
「最近ねー、ぜんぜん来てなかったからね。空気の入れ替えしとかなきゃ、ジメジムするでしょ?」
とカカシは手を止めない。
「悪い。寒いよな」
全開だった窓を
ガラガラと音を立てて閉めた。
鍵を閉める。
「ああうん、ごめんね。ありがとう」
黒のコートをハンガーにかけて、
喪服を脱いだ。
はぁ……ため息が漏れる。慣れない窮屈な服はやはり疲れた。今度クリーニングに出さないと。
棚から自分の任服に手を伸ばした。いつもの任服に着替えると、安堵感が広がる。動きやすい。やっぱり任服が良い。
振り返ると、
カカシは奥の部屋だ。
ふすまを開けた。
私の父の位牌に
手を合わせていた。
「カカシ、ありがとうね」
そっと、そばに寄り、座布団に座った。
同じように合掌する。本当に来てなかった。墓参りもしないと……。
そう思ったときだった。
となりから声がしたのは。
「花奏のお父さん、お願いがあります」
カカシの声。
なんだ突然。
「えー…、花奏さんと結婚させてください。よろしくお願いします。一生大切にします。なので、だから、許してください」
突然言い出したから、ギョッとした。
凄く真剣に言うカカシ。
私は顔が緩んだ。
もう一度目をつむり、
私もお願いした。
「お父さん、カカシのお嫁に行きます。どうぞ見守っていてください」
静かな畳みの和室。
返事は戻らないけれど、遺影写真のお父さんは、いつも微笑んでいる。ゆっくり目を開けた。
「よし、反対の声はないし、オッケーでしょ?」とカカシ。
「あったら怖いよ」
ふ、と笑うと、自分の頭がカカシの方に引き寄せられた。
コツンと大きな肩に当たるのだ。
「大事にするから。ぜったい」
「うん、……ありがとう」
カカシは
しばらく引き寄せたまま
私の父親の遺影を見ていた。