第22章 葬儀と日常生活へ
薄暗い雲が広がり始める。
夜が明ける頃には、小雨が降り始めた。
ぽちゃん。ぽちゃん。
溜まった水滴が落ちる音。
ご僧侶の読経。
線香。蝋燭。
昨夜と変わらずに式は進行する。
たった2人。
でも、最後の出棺時だけは違った。
猿飛さまが先頭に立ち棺を担いだのだ。
葬儀が終わる頃、
雨は上がる。
明るい晴れた青空に変わった。
濡れた地面。水たまりに日が反射する。夕方4時。薄らと大きな虹が出ていた。
「しぐれ虹…じゃな」
三代目は雨上がりの空を見上げて
そう言った。
「あ、本当ですね。んーそういえば昔、アカデミーの授業で習いましたよね。虹が出る話を……なんだったかな」
「虹のあし、だろ」と隣にいたサスケ君。
「ああ、それそれ。ぜったい習うよね」と、ぽんと手を叩いた。
虹の足がスッと出たのに、そこにいる当人はまったく気づかない。虹色に自分が染まるのに。
他人には見えて自分には見えない。
今が幸せだと気づかない。
みんな、
幸福の中で生きている。
確か、そんな話だった。
「花奏、一度着替えて来い。サスケの荷解きが済んでおらぬのじゃ。助けてやれ」
猿飛さまは遺影写真や荷物を持つ。
大量だ。
「はい、わかりました。では」
踵を返して
瞬身の術を使おうとしたときだ。
「花奏」
黒のコートの端が、
小さな指で、ぎゅっと引っ張られた。
「え」
私は振り返る。下を見てるサスケ君。なにか問題だろうか、私は前に屈んだ。
「なにサスケ君、どうしたの?」
「………これ」
うつむき、小さな声が耳に届く。
サスケ君が握ったまま
手を前に出す。
「ん?なに?」
私は反射的にその下で
手を広げた。
すると、ちりん。と、
小さな鈴の音が手に鳴るのだ。
同時に
冷たくて硬い金属の感触が
手に広がる。
「……カギ?」
私に渡したモノは、シルバーに光る真新しい鍵。小さな鈴。
「合鍵。……ご飯の作り方教えてよ。料理とか、やったことねーし」
「うん。了解。鍵ありがとうね」
私は嬉しくて笑った。
サスケ君が私を頼ってくれるのだから。