第22章 葬儀と日常生活へ
午前0時を過ぎた頃になると、もう限界だ。
私の肩にコツンと何度も当たる。
触れると、すぐに姿勢が戻るけれど、
何度も繰り返した。
私は息をはく。
「サスケ君、わかったよ」と
一度、席を立った。
部屋の端にかけたハンモックから、黒のコートを手に持ち、同じ席に戻った。
「ここで寝ていいよ。あそこで寝たくないんでしょう?私が横にいるから、寝ていいよ」
サスケ君の肩に、
黒のコートをかけた。
「……いらない。寝ないって言ってんだろ」
ぶっきらぼうな言い方だった。
でも、返さないし、コートをぎゅっと掴んだ。
「ふふ、じゃあ目を瞑ってるだけでいいから。寝なくていいから。ね?そうしなよ」
「……目、つむるだけ、だから」
「うん」
コツンとサスケ君の黒髪が当たる。私の肩に寄りかかり、コートの腕を口もとに近づけた。
「これ、花奏の匂いがする」
「そう?私のお気に入りなんだ。気持ちいいでしょう?」
「……ああ」
私が私用に買った黒のコート。裏地は毛布みたいにあたたかい。サスケ君は私の方を眠そうな目で見上げた。肩に寄り添ったまま。
「…花奏……明日もいるだろ?」
「うん、いるよ。そうだ。来週から、サスケ君の護衛するの。よろしくね」
自分の肩に寄り掛かる小さな背中に、優しく手を添えた。小さなあたたかい身体。私の腕が、すっぽり覆ってしまうほど小さい。
これからサスケ君は、1人きりで生きなければならない。ズキリと胸が痛んだ。
「……護衛だろ?…知ってる」
「知ってんだ、情報早いね。猿飛さまから聞いたの?」
「ああ。だけど、オレ、明後日からアカデミー行くから」
「え"っ!? いやいや、病院は?」
「今日の朝、とっくに退院したよ。アパートに引越し終わったし、もう身体は問題ない」
そう言い残して、サスケくんは目を瞑る。目を閉じただけで済むわけはなく、そのまま、静かな規則正しい寝息に変わった。