第21章 お家と飲み会
「花奏、一生大事にする。だからオレと結婚してよ。家族いっしょに作って。頼むよ。な?」
私の耳に、
カカシの大きな指が触れる。
傾けた顔が近づく。
銀髪が私の肌に当たる。
「…うん。…ありがとう…カカシ…私で良ければ」
最後まで瞳を閉じなかった。
唇が重なっても、甘いキスが始まっても、カカシの優しげな顔を見ていたかった。
「あーあ、もっと、ちゃーーんとした場所で言おうと思ってたのに。ダメだな、酔っ払うと止まらないね」
唇を離してカカシが微笑んだ。私も笑おうとしたのに、視界は揺らいだ。
「なに泣いてんの」
私の頬を拭うと
大きな身体にすっぽり細い体が入った。
「あのね泣くなよ、泣かすために言ったんじゃないってば」
なんて決まりが悪そうな言い方だけど、
カカシの声は優しい。
「お前もオレも親いないし、ひとりぼっちだったでしょ。いっぱい家族作ろうよ、な?」
頭を縦に振った。
何度も何度も。
ずっと家族が欲しかった。
他里から小さなときに、
木ノ葉隠れ里へ来た私。
そこから
父とふたりで暮らしてきた。
暗部として働く父親。
木ノ葉は大戦の真っ盛り。
任務多忙な日々だった。
最初の頃、父親が休み以外、
夕食は、ひとりだった。
お母さんは幼い頃からいない。お父さんがひとりで、私を一生懸命育ててくれた。
だから
弱音を吐けなかった。
ごはんをいっしょに
食べて欲しいと。
お母さんが欲しいと。
ひとりで寂しいと。
友だちが欲しいと。
怪我が治り、
アカデミーに通うようになった。
カカシやヤナギや紅や、友人が増えた。そこから寂しいという気持ちはなくなる。
ただ、
父親が亡くなった日から
家に帰ればひとりだった。
暗い部屋に帰って
電気をパチンとつける。
「おかえり」と言わない
位牌を見るたびに、泣いていた。
「家族が欲しい」と
願わなかった日はなかった。
「ありがとう、…大好きだよ…カカシ…」
私は嬉しくて嬉しくて、カカシの腕のなかで、止まらない涙を流した。