第20章 ひとり。
「花奏、帰ろ」
「え、ああ…うん」
サスケくんが家から出てきた。
外で待っていた私を通り過ぎてしまう。
「サスケくん、待ってよ」
「うるさい」
ずんずん進むサスケくんの後ろを歩く。閑散した街。血が地面や壁に所々に飛び散っていた。私は早歩きで回り込んだ。
「はい」
ハンカチを、サスケくんの顔の前に見せた。小さな彼が受け取りやすいように。
「……」
パシッと取り上げたサスケくんは、瞳を閉じてハンカチで顔を覆う。また歩き始めた。
「……だれにも、言うなよ」
「うん、言わない。だれにも言わないよ」
サスケくんの瞳は痛痛しく充血していた。下を向いて歩くサスケくん。涙を見せなくないのだろう。当たり前だ。男の子だもの。
小さな背中が幼い頃のカカシと被る。サクモさんが亡くなったのも、ちょうど7歳だった。
あのときは、私がそばにいた。
少しは彼の支えにはなれたはず。
いまのサスケくんは…まわりに
だれもいない。
ひとりきりだ。
「サスケくん」私がそう呼ぼうと思ったときだった。鋭利なモノが目の前を飛ぶ。
「っ!!」
とっさにサスケくんを庇い、私は背中のチャクラ刀で跳ね返した。
地面にクナイが刺さる。
金属部に印字された特有の
文字が黒光る。
根。
「ここは立ち入り禁止だ。許可を出していない。すぐに立ち去れ」
天を見上げた。10人はいるだろうか。屋根や家をつたい、次々と、こちらに向かう。まさに四面楚歌だ。
一瞬で囲まれていた。
「…花奏…」
「大丈夫、私が守るから」
私はサスケくんの前に立つ。獣の面を被る忍たちが近づく。根の忍は暗部と似る。
けれども、
中身はまったく違う。
無感情は当たり前。ロボットのように精密で機械的の忍ばかり。
指令に従わぬ者に対しては、徹底的で容赦ない。仲間だろうが住民だろうが拷問を下す。そして揉み消す。ダンゾウの指令を第一に動く。それが根。