第20章 ひとり。
精密な男が泣くだろうか。
……小さな私を助けるだろうか。
家の中に入った。扉をあけると真っ暗な廊下が広がる。
サスケくんの気配は、
奥の客間にある。
でも、
私は2階へ続く階段を上がった。
みしみし、と足音が鳴る。ひんやりした廊下。知ってる。歩いた。私はここを歩いて……階段から転げ落ちた。
"花奏…ちゃん…"
転けたあと、小さな声が聞こえて…客間に、手足や顔が痛かったけれど、とことこ歩いた。扉は開いていて、重なるイタチのお母さんとお父さんの姿を見つける。
近づくと、イタチのお母さんの
指が私の手に触れた。
花奏ちゃん……ごめんね……
サスケをお願い、助けてあげて……
あたたかい指が冷たくなって、呼んでも返事が戻らなくなった。
怖くて怖くて泣き叫んで、
小さな私は逃げた。
外に出ると、黒い塊がそこら中に横たわっている。人々が町中で倒れていた。
小さな私は、泣いて泣いて…イタチの名前を呼んだ。
なにか分からずに気づけば
阿吽の門にいた。
誰かの葬儀でイタチは
泣いていた。
声が聞こえる。
"サスケを
どうか助けてやって欲しい"
言葉が頭に響く。
"見守ってやって欲しい。オレはもう出来ないから…"
私の頭にイタチと過ごした
思い出が降った。