第20章 ひとり。
「あれ、サスケくん?」
気づけば、
彼がいない。
走って探すのに見つからない。
気配を探った。
匂いや気配を頼りに歩くと、
ある家にたどり着く。
美しく趣きのある屋敷。
石壁にうちはシンボルマークが並ぶ。
ここは
うちはイタチが住んでいた家。
私が少しの間育ててもらった家。
そっと石壁に触れた。
壁に、家紋の中心をクナイでぶち抜いた跡が残る。うちは一族を憎んだような真っ直ぐな痕跡だった。
この跡を私は知っている。
イタチが入隊時、いつも共にしていた。
私が教育係だったと言っていい。
大した指導はいらなかったが、いつも演習風景を見ていたせいか、よく覚えているのだ。
石壁を抉った跡が、
イタチのクナイを投げた跡によく似る。
真っ直ぐに狂いなく、
教科書に出てくるような綺麗な痕跡だからだ。
彼のクナイ捌きは他の忍とちがう。
演習時は、必ず私の負けだった。
綺麗に中心を貫き、華麗に着地すると、私の方に平然として駆けてくる。微妙に外れた私は頭が上がらない。
毎回連敗するから、さすがに
「先輩でしょうが」と、
カカシに嘲笑されてしまう始末で。
ただ、いま改めて考えると、
彼の実力は上忍レベルを抜きん出ていた。
自分が下手だったわけではなく、
イタチが完璧だったのだ。
一度、私が極端に失敗したことがあった。
イタチは涼しい顔をして
クナイを弾き飛ばす。
そして、
綺麗な円を描き、
そのクナイはマトの中央に
狂いなく刺さる。
それは恐いほどに精密だった。