第20章 ひとり。
「…なんだよ、…これ…」
サスケくんが呟く。うちはの家紋が大きく印字された門下には、黄色のテープが張り巡る。
小さな手が黄色いテープに触れる。立ち入り禁止の文字。
カラスが遠くで鳴く。
人気はなく閑散としていた。
「……お前は来なくていいから」
「サスケくん?ねえ、危ないよ?」
私が彼の肩に触れる。
その手からすり抜けると、
突然走り出す。
「ちょっと!!」
サスケくんが門をくぐり抜けて、そのまま中へ入ってしまった。
「ダメだってば、サスケくん!!」
すぐに周りを見た。
いまは誰もいない。
「もう」
仕方なく自分も中に入った。
途端に足が止まってしまう。
街中を見渡す私は言葉を失う。
うちはの街が
地獄絵図と化していた。
むごい
という言葉が正しい。
血や泥は地面や家の壁に吹き散り、家具や食器は床に落ちたり、壊れた状態だ。
住民の抵抗の跡が、
街中に残されている。
私は硬い壁に触れた。
ヒビ割れ、冷たい血が点々と付いていた。
めまいがしそう。
小さな子どもの記憶は
優しくてあたたかい記憶ばかり。
ただ……
イタチは泣いていた。
葛藤していたのだろう。なぜ、苦しんでも強行に至ったのだろうか。答えが見つからない。