第20章 ひとり。
「……痛くないの?それ」
目が合うと、
小さなサスケくんが目をそらした。
黒髪がなびく。
「え?うん、大丈夫大丈夫。これぐらいすぐに治るし」
苦笑いの私は顔を触る。
ガーゼ塗れの顔を。
「…ごめんね、疲れてるのに。邪魔しちゃったね」
サスケくんの顔色が青白い。私と話すよりも身体を休ませた方がいい。
「あ、あのね、サスケくん。私、じつは薬で小さくなってたの。だからずっとイタチやサスケくんにお世話になっていたんだ。ありがとうね、今日は帰るね。あ、私、明日も来るから」
明るく伝えだけれど、サスケくんから返事は帰ってこない。簡単に元気になるわけない。当たり前だ。
「じゃ、じゃあ……」
私が背中を向けたときだった。
踵を鳴らす音と、
声が聞こえたのは。
「待って、花奏」
「え?」
「連れて行ってよ」
「どこに」と振り返ると、小さなサスケくんが窓から体を乗り出す。パジャマ姿なのに。
「ちょ、ちょいちょい!危ないってば」
焦った私は彼を窓から下ろして病室に入った。息が止まりそうだった。ここは4階なのに。
私は自分のコートを脱ぎ
サスケくんの身体にかけた。
「いらないよ」
ぷくっと頬が膨らむ。
「いるの。ね?寒いから」
「オレより、そっちの方が寒くない?」
小さな指が任服に触れる。
肌が露出した肩には暗部の刻印。
「私は大丈夫だよ。なんせ、大人だからね」
いや寒い。
大人だろうが寒い。
ただ、パジャマ姿に靴を履いてるだけの、サスケくんよりもマシだ。
「背中に乗せてよ」
うん。と腰を下ろした。
いや……まずい…?
ダメなような気もしたのに
身体が勝手に動いていた。
私の背中に乗り込んだサスケくんが
指をさす。
「うちはの街に行ってよ」