第20章 ひとり。
診察を終えても、私は家に帰らなかった。木ノ葉病院内の大木に座り、そこから見える男の子を眺めていた。
窓から見える少年は、
ベッドに座り、正気なくうつむく。
下を向く瞳は凛々しい。目鼻立ちが整い、黒髪で、どこかイタチに似ている。
風が優しく息吹く。
今日は冬に似合わず、日差しが暖かい。
ただ、
彼の周りだけは
暗く淀んで見えた。
「ねえ」
口が小さく動く。
「……お前、だれ?」
突然降る言葉に
私は首を左右に振った。
「お前だよ、兎ヤロウ」
固まったあと
小さく笑った。
……凄いな。
気配は完全に消していたのに。この木はあの子の視界から、いっさい見えない死角だ。
さすが、うちは一族。
7歳でも頭角を現す。
「よっ…と」
私は軽く
その場を飛び超えた。
窓の真正面にある大木に足をを止めて
腰を下ろした。
兎面をつけたままで。
「こんにちは、名前は、サスケくんだよね。初めまして、ではないんだよ私たち。覚えてる?」
優しく言った。
刺激しちゃいけない。
しかし…兎ヤロウって
なんて酷い。
一応女なんだけど。
「…知らない。暗部がオレに何のよう?」
ぶっきらぼうな言い方だった。
横目でチラリと見たサスケ君は、私を警戒している。
「ううん。たまたま通りがかっただけ。べつに用はないよ」
会話をしながら気づいた。
サスケ君は
暗部を知る。
だれかと
接触したのだろうか。
さしずめ……カカシかな。
イタチと交代で私のお世話を
していたと話していたから。
「私は花奏って名前。よろしくね」
サスケくんは言葉に目を見開く。
驚いた瞳が私を見つめ返した。
「…花奏? 同姓同名?ちっちゃいヤツは死んだかもって病院で聞いたけど…違うの?」
……生きてるわい!
実際いなかったし誰も私が小さかったことを知らない。仕方ない。
私は深く息をはいて
兎面を外す。
サスケくんの目がさらに
大きく開いた。