第14章 失ったもの
ヤナギのアパートの前に
カカシと到着した。
一年ほど前に
この場所に来たことがある。
ヤナギが任務中、珍しく足に怪我をしてしまい、カカシがおんぶをして家まで運んだ。私はアパートの鍵を開けたり、彼の介抱を手伝った。
家の周りを確認した。普段と変わらない。なにか、罠が仕掛けてあるかもしれない。アパートのドアの前に立つ私の表情に、不安が滲んだ。
「花奏、開けるよ?」
ドアノブに手をかけるカカシ。頷く私に視線を合わせない。カカシも気配を探る。
ガチャ……
鍵がかかってない音。ドアノブを回して扉を開けた。
私とカカシは固まる。
「……ヤナギ…………」
私は思わず声を発した。
何も部屋に残っていない。引っ越し後のように綺麗に掃除も終わる。
この場所に戻るつもりはない。
ヤナギの声が聞こえそうだ。
「なーんも残ってないね」
2人で手分けして、リビングやキッチン、寝室などを一通り確認した後、カカシが玄関に戻ってきた。
「やっぱ、アイツ抜かりないね」
カカシはポケットに手を入れる。
「あ、でも、鍵は置いてるね」
備え付けられた木製の靴棚に私は目をやった。本鍵とスペアキーが置いている。
次の人がすぐに使えるように。
「じゃあ、ヤナギの実家に……」
と、私が何気なしに玄関の天井を見上げたときだ。違和感があった。
「カカシ、あれ、変じゃない?」
指をさした。色が違う。天井の一部、30センチ四方の壁だけ色が明るい灰色だ。他は暗い灰色なのに。
「……ん? ホントだね。ちょっと離れて」
カカシは靴棚の上に飛び乗ると天井に手で触った。
「……っ!」
クナイを突如取り出した。色が明るい場所だけを切り込みを入れる。
天井に隙間を作り、手を入れたカカシ。それと同時に聞こえる書類の音。
引き抜いたカカシの手には、数枚の書類を持っていた。
軽く靴棚から飛び降りて、すぐに中を確認するカカシ。全てを見終わった後、動きは止まった。
「……ヤナギ……お前……」
カカシが絶句している。
「……カカシ? 何か書いていた?」
「……ああ」
力なく渡された書類を私は受け取り、中身を見た。
「っ!!?」
最初の一文で嫌な汗が流れた。