第14章 失ったもの
私はカカシの腕を組んで、グイグイ引っ張り、暗部の廊下を歩いてる。
「もう、カカシ? 変なこと言っちゃダメだよ。テンゾウが嫌な気分になるでしょう?」
媚薬で後輩に情けない格好を見せてしまったのだ。恥ずかしい。
「んー、あのね、花奏」
カカシの、やる気のない返事。
「なに?」
カカシの方に顔を向けた。私は真剣な話をしてるのに。
「柔らかいモノがさ、オレの腕に当たってるのよ、さっきから。ねえ、ワザと?」
間が空いた。
カカシが自分の腕を見ている。私は視線をずらして、同じ場所を見た。
「っ! 」
目を剥いて、すぐにカカシから距離を取った。
「ご、ごめんね、ワザとじゃないの。 ご、ごめ……」
うわ、やっぱり変だ。 カカシの身体に触れることに、抵抗感が一切なくなってる
「煽るのが、ホント上手いね」
今にも口もとが笑いそう。マスク越しだから、見えにくいけど、目は笑ってる。
「だから、煽ってないって……!」
「花奏ってさ、イジワルだよね?」
並んで、少し離れて歩いていれば、カカシが変なことを言う。
「カ、カカシのほうが意地悪だよ」
私のこと、からかって喜んでるし。
「花奏、外じゃ何もできないって分かってるくせに、オレに触れてくるじゃない」
手首を掴んで、廊下の奥へ引っ張るカカシ。どこに行くのよ。
「……カカシ?」
廊下の奥。倉庫がある部屋。
暗い影が出来た場所。