第14章 失ったもの
「了解です、カカシ先輩。今度なにか奢ってくださいよ?」
テンゾウは、パチンと待機所の電気を消した。真っ暗な待機所。誰もいない。こんな待機所は久しぶりだ。数ヶ月ぶりかな。
「んー、じゃあ、みんなで焼き肉でも行くか。最近忙しくて、暗部の飲み会もしてなかったでしょ? 3代目がこの前ね、飲み会の経費出してくれたんだよね」
カカシは人差し指を立てて提案した。その素晴らしい提案に、私は即座に目を光らせて反応した。
「はいはいはいはーーい! 賛成ー!行きたい、行きたーい!」
手を上げてカカシにアピールする私。焼肉だよ、焼肉。肉だ。焼肉が食べたい。カルビ最高!
カカシとテンゾウは、なぜか身体を退けた。 あれ、テンション間違えただろうか。
「ふ、なによ、花奏? 急に元気になっちゃって」
口もとに拳を置いて、目を細めるカカシ。私の瞳は焼肉というキーワードで、キラキラと輝いていた。
「だってね、焼肉だよ? 行きたい行きたーい! テンゾウ、ぜったい覚えておいてね? 忘れちゃダメだよ? メモよメモ」
ビシっと指をさし、指示を出した。暗部の飲み会はレアだ。超貴重。中止や延期が特に多い。呼び出しやら、緊急任務が入るからだ。
ヤマトも私と同じように
表情を輝かせた。
「はい! じゃあ、経費出た残りの分は、カカシ先輩の負担……と」
「お、いいねー、これで欠席者ゼロね、バッチリね!」
ウキウキ飲み会の会話する私とテンゾウを、カカシは微妙な顔で見ていた。
「お前ら、あのなー……。 ま、今回は仕方ないね。 出た分はオレの奢りで良いよ」
「カカシ太っ腹ーー! ありがとー」
カカシの腕を掴んで、ぎゅっと抱きついて笑った。
あーお肉が食べたい。カルビ、タン、ロース、食べたーい。幸せー。
「花奏先輩!?」
テンゾウの目が点だ。
「……え! ああ、ごめん!」
なんだ、今のノリ……! 頭がおかしい。私はすぐにカカシの腕を離した。カカシが離れた場所を見つめていた。
「ん? 別にいいよ? もっとす…ご」
カカシの口を私は手で押さえた。なにを言う気だ、テンゾウに。
「じゃーね!テンゾウ、またねー」
「はい、お疲れ様です」
テンゾウは、アカデミーへ報告書を提出するために、私たちとは反対方向に歩いて行った。