第14章 失ったもの
「カカシ先輩、昨日の件、3代目が御立腹されてましたよ。 大丈夫ですか? あの後、猿飛様をなだめるの、大変だったんですからね」
「悪い、テンゾウ。 多分、相当ドヤされるなオレ」
深い溜息をついて、カカシは、頬杖をついて、ペンを走らせる。気が萎えたように肩を落とした。
「なに? 」
カカシが横目で見てきた。私が疑問気に見ていたから、その視線に気づいたみたい。
カカシは、ふてくされた顔だ。お前のせいだーみたいな顔。ツーンとした顔。報告書の方に視線を戻して、文字を再び書き始めた。
「……ええ!? もしかして私のせい?ごめんね? でも、どうして怒られるの?」
怒られるのは私だ。私がミスをしたのだから。
猿飛様に怒られるカカシなんて、私は想像できない。忠実に仕事をするカカシだ。ミスも数えるぐらい。
「……言いたくない」
ぶっきらぼうな声。なによケチ。
「教えて? 私のせいなんだよね?ごめんね?」
「あーもう、いいから。 どうでもいいでしょ。 早く書きなよ。ヤナギの家を調べて、猿飛様に報告しなきゃダメだろ?」
「ああ、そうだね、ごめん」
咎められて大人しく報告書を書いていると、テンゾウが笑ってる。肩を小刻みに震わせていた。
「テンゾウ、花奏に言うなよ、絶対」
釘を刺すカカシ。
声が低い。鋭い。
「いや、あの時の先輩、傑作で……」
テンゾウは、堪えきれず吹き出した。どんなカカシだ。
はあ……と盛大に息を吐いて、カカシは頭をかいた。
「ま、命令無視したオレが悪い。罰はちゃんと受けるつもりだよ」
「命令無視?」
なんの話?
カカシは、ひらめいたように、ペンを止めた。
「花奏、いっしょに猿飛様に報告来てちょうだいよ。 お前がいたら怒られるのが半減しそうでしょ?」
「えーー……」
倍増しそうだよ。
「猿飛様は花奏先輩に甘いですからね。 はたから見ても分かりますよ」
テンゾウが言うと、カカシは私の方を向いた。
「頼むよ、花奏、この通り」
手のひらを合わせて、拝むポーズをするカカシ。
「わーかーりーまーしーた! わかったよ、一緒に行く」
私が言うと、カカシはポンと頭を撫でた。
「悪いな、ありがと」
嬉しそうな声だった。