第14章 失ったもの
ヤナギが住んでいた家へ行く前に、私とカカシは暗部本部に向かった。
カカシには廊下に待ってもらい、私は自分のロッカー室に行った。
ロッカーの鍵を開けて、扉を開けた。暗部の靴を取り出して、床に置く。サンダルを脱いで、靴に履き替えた。やっぱ、これだよ。
カカシに借りたサンダルは、ビニール袋に入れた。
踵をトントンと馴染ませたら分かる。やっぱり靴の方が動きやすい。
ロッカーに置いたポーチを取り出して、中に入ったピルを服用した。
カカシは困らないと言った。だけど、実際問題、出来たら困るだろうな。 私も焦ると思う。 私もカカシもまだ20歳になったところだ。 親になる自信はない。
ロッカーの扉に設置された鏡をみた。なんだか浮かない顔。母ちゃんに似てきた私。写真でしか見たことがない。
アルバムの中でしか、
もう会えなかったのにな……。
形あるものは、いつかなくなる。
分かってる。分かってるよ。
記憶の中に、
お母さんもお父さんもいる。
大丈夫。
でもね、やっぱり悲しいよ。
私は、暗部予備の服をロッカーから取り出して、トートバッグに入れた。ビニール袋に入れたサンダルと、ピルが入ったポーチも中に入れた。
「カカシ、お待たせ」
カカシは、廊下で壁にもたれて腕組みしている。紙を手に持つ。
「報告書忘れてないよね?」
ひらりと紙を見せるカカシ。真っ白な報告書。……報告書!
「っ!? も、もちろん!」
「今の焦り具合は、絶対忘れてたね。飛んでたでしょ?」
カカシは半眼だ。ジトーッと見てる。疑ぐる目だ。
「わ、わわ、忘れてないよ、うん、うん、あ、待機所で書こう」
「本当にー? ま、そうだね、先に書いてから行こうか」