第13章 その後
「カカシ、なんか変だよ。
……甘いよ……」
食卓でカカシと向かい合わせで椅子に座り、餡子が練り込まれた食パンを私は食べている。視線がさまよう。
「ん? なんのこと? カレーパンは甘くないでしょ。なにを言ってるわけ?」
カカシが不思議そうに顔を傾けて、もぐもぐカレーパンを食べる。ちがう。パンの話じゃない。
「もう、いいよ。 あ、カカシ、カレーパン美味しい? いちばん人気なんだって、そのパン」
タイミングが良かった。「ふっくら焼きたてです」と従業員の方が持ってきたとき、ちょうど私が買ったのだ。
他のお客さんも、出来たてのパンが来ると、トングを使って、カレーパンを次々と購入していく。あっという間になくなった。
「うん、美味いね。 ここのパン屋さん、人が多くて買いに行ったことなかったんだよね。 今度からここで買おうかな」
カカシは満足そうに食べる。カレーの匂いが香る。
私は、カレーパンと、さらに焼きそばパンを2つずつ購入した。
なぜかっていうと、カカシは昨日、まったく食べていないのだ。ちゃんと食べないとダメ。
いっぱい買ってきて正解だ。カカシに買ってきたパンは、速攻でなくなっていく。
「花奏も美味い? 」
「うん、美味しい。 甘いの大好きなの。クリームパンとか、なんでも好き」
ケーキも好きだし、パフェも好き、アイスクリームも好きだし、フルーツも好き。
「そう、じゃあ、今度デートしようよ。 花奏が好きなお店連れて行ってあげるよ」
「え、本当!? 嬉しい! あ、じゃあさ、パフェ食べに行きたいなあ…………、って、
え、デ、デート?」
思わず、飲んでいたホットカフェオレを吹き出しそうになった。当惑した目で見たが、カカシは表情をゆるめている。
「うん、デート」
「あ、ははは……う、うん」
私は困った顔で笑う。ああ……カカシがおかしい。どうも落ち着かない。
私の顔を見てご機嫌そうなカカシ。食卓に向かい合い、食べているだけなのに気恥ずかしい。
どうして私だけ、こんなに動揺してるんだ。目の前の幼馴染の男は飄々としている。……なんなの。ズルい。