第5章 2人で…*朝日奈祈織[ブラコン]
彼女は驚いたように目を見開いて、それから困ったように笑った。
「祈織さんは何でもお見通しですね。」
そう言って、少し哀しそうに笑うと、奏は自分の過去をポツリポツリと話し始めた。
「私…昔、愛する人を亡くしたんです。」
静かに、あの時を思い出すかのような話し方。
僕は静かに聞き続けた。
「彼はサッカー部で、サッカーが大好きで…同じくらい私も愛してくれていました。私は彼のことはもちろん、サッカーも…彼の周りのもの全てが愛おしかった。彼は私の全てだった…!」
彼女の声が震える。
体も小刻みにふるえ始める。
「だけど彼はもういない。…病気で、急死。…人間の命って呆気ないなぁって思いました。だから…私も……彼の後を追えるって…!!」
彼女の目には涙がたまっている。
今にも零れそうだ。
僕はそっと手を伸ばし、彼女の涙を拭った。
…やっぱり僕と君は同じだったんだね。