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短編集  Dear my precious…

第26章 Only You*カルナイ[うたプリ]



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「ねえ、嶺ちゃん。恋ってなんなんだろうね。」

いきなりそんなことを言い出すものだから、飲んでいた紅茶を吹き出しそうになった。

「ど、どうしたのいきなり…」

今回の曲のテーマがいくら恋だからと言って奏ちゃんがそんなこと言い出すなんて、信じられなかった。

「ん…とりあえず聞いて。」

差し出されたイヤホンを耳に入れる。
奏ちゃんは時々こうやって音楽で気持ちを伝える。今回もそうなのだろう。

一曲目は明るいテクノポップ調の曲。
二曲目はらしくない暗めのバラードだった。

イヤホンを外すと待っていたかのように話し出した。

「藍ちゃんはああ言われたけど。創ってみたんだよね、四人の曲。」

と複雑そうな顔を浮かべる。
ぼくは次の言葉を待った。

「一曲目は仕事の話を聞いた直後に、二曲目は昨日創った曲。どっちも私の恋に対するイメージ。」

音と説明で伝わることもある。

ああ、なるほど。

恋がわからなくなったということか。
イメージが掴めなくなって上手く音に出来ない、と。

回りくどい表現に苦笑する。
奏ちゃんらしくてほんと可愛い。

「みんなと話してるうちに、私って全然恋とかしたことないんだな…って痛感した。」

恋ってどうしたら出来るのかな…?なんて呟いている。

「してるじゃん、音楽に!」

と声を上げて笑うと困ったような顔をされた。

「前まではそれでもいいって、私には音楽だけでいいって思ってたけど…」

「けど?」と拗ねた彼女の言葉を促す。

「みんなに会って…みんなとの音楽にドキドキして……音楽だけじゃない、広い世界を教えられたの。」

宙に向かって優しく微笑む彼女にドキッとする。
初めて聞いたことに鼓動が速まる。

「これが恋だったら、とんだ浮気者だね。私。」という言葉は耳に入ってこなかった。

「奏ちゃん。」

「ん?」

「ぼくは伝えなきゃなにも始まらないと思う。」

っていうぼくも伝えられてないけど。

「うん……」

「でも伝える方法はいくらだってある。奏ちゃんには音楽って方法が…みんなに伝えてみなよ、その思い。」

「…!」

ぼくも伝える。

きみの曲に乗せて、この思いを。

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