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短編集  Dear my precious…

第26章 Only You*カルナイ[うたプリ]


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「っ♪ふ~ふふん~♪」

間抜けな鼻歌で目が覚める。
目を開くと楽譜が飛び込んでくる。
こいつ、オレが寝ている間も作曲してたのか…?

「お前こそ、疲れてねぇのか?」

「うわっ!蘭ちゃんいつの間に起きたの?!」

気遣ったのに、逆に驚かれてしまう。

「あー、さっきだ。」

肩から頭をどけると、奏は「全然気がつかなかった…」と言いながら楽譜を整え始めた。

「あ、そうだ。まだ仕上げてはないけど聞いてくれる?」

それは提案では無く強制。
オレの返事を待たず、ピアノに座る。

(こいつのマイペースさにもいつの間にか慣れてきたな…)

なんて考えていたら曲が始まる。
軽快なサウンドが響く。

オレは何も言ってねぇから奏がイメージして作ったのだろう。
オレと恋を繋げるとこんな感じなのか?
こいつの中でのオレのイメージってなんだ?

曲ではなくそんなことに頭がいってしまう。

曲には爽やかさと強さと…上手く言い表せないがそんなものを感じた。

それがお前がオレにもつイメージなのか?

弾き終わって大きく伸びをする奏。
「やっぱギター弾けるようになりたい…」なんて呟いている。

「で……どうだった?」

「Rockを感じた。」と言えば、奏はクスクス笑う。

「…なんだよ?」

「…月が綺麗ですね。」

「はっ…?」

「又は私死んでもいいわ。」

「ああ…I love youを日本語訳した奴か。」

なんだよ、いきなりの告白か?
そう思ったら、心臓が落ち着かなかった。

「…急にどうしたんだよ。」

動揺を隠すように聞くと「ああ…」と思案しながら返事。

「いや…蘭ちゃんがI love youを訳すと『Rockだぜ』になるんだろうなって。…だから最高のほめ言葉、もらいました!」

満面の笑み。

もう、なんなんだよこいつは!
オレをどんだけ惑わせれば気が済むんだ?!

いろいろ通り越して怒りがわいてくる。

「…お前は?」

「えっ?」

「お前が訳すとどーなんのか聞いてんだよ!」





小さく空気が震える。

「私に新たな世界を教えてくれるのが、あなた。」

人に対してだけじゃない。
きっと音楽がそうだろう。
こいつらしいな、ほんと。

(奏、最高にRockだぜ。)

心の中でそう呟いた。
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