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短編集  Dear my precious…

第26章 Only You*カルナイ[うたプリ]


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打ち合わせのため訪れたカナの部屋。
シンプルだけど女の子らしい部屋になんとなく心拍数があがる。

「藍ちゃん、人間らしくなったよね。」

ちょっと休憩と言って、ソファにダイブしてクッションに顔を埋めたカナが言った。

「最初さ、なんで人間じゃないかがわかったのかって藍ちゃん聞いたでしょ?」

「そうだね。」と軽く頷く。
突然なにを言い出すのだろう。

「あの時は勘だと思ったけど、やっぱり確信してたんだって今は思うんだよね。」

「…どういうこと?」

「あの時はね藍ちゃんを見てなにも思わなかったの。私の場合、人を見るとその人の好きなものとか大切にしてるものとかが伝わってきて、曲が浮かんでくるのが常だから…違和感があったんだろうね。」

うまく言葉に出来ないのか、それともあの時を思い出しているのか、言葉がゆっくり紡がれる。

「でも今は、無意識かもしれないけど藍ちゃんの中で好きな物が増えてるってわかるよ。」

カナの微笑みに電流がいつもより強く流れる気がした。



「ねぇ、恋ってなに?」

沈黙が降りたところに、ずっと疑問だったことを口にした。

その問いにカナは黙ったままピアノを見つめていた。答えが見つからないようだ。
ボクは仕方なく質問を変える。

「キミは恋したことある?」

「あるって言いたいけどね。」

ちょっとだけ寂しそうに笑う。

物心ついた時から音楽に魅せられていた彼女は、恋愛する時期とも言える青春時代を作曲に費やしてきたそうだ。

「だから私にはわからない。」

でもね、と言ってボクは見つめられる。
優しい目だ。

「その人が自分の中で特別って思えたら、それは恋なんじゃないかな?」

特別=恋

頭の中にその式が浮かぶ。

だったらボクはもう恋をしてるんだ。
カナ、キミに。

「今なら書けそうな気がする。」

気がするなんていう感覚的なことを違和感なく使える自分がいる。
驚きと嬉しさがこみ上げ、笑みが浮かぶ。

「じゃあ私もいい曲創らなきゃね!」

カナも笑顔でいた。
嬉しいという気持ちを共有していることが幸せだった。

ボクたちは顔を見合わせて笑った。
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